リッカチ vs リカッチ

制御工学でよく目にするものに”Riccati”の方程式というものがあります。

\[ \boldsymbol{P}\boldsymbol{A} + \boldsymbol{A}^\mathrm{T}\boldsymbol{P} – \boldsymbol{P}\boldsymbol{B}\boldsymbol{R}^{-1}\boldsymbol{B}^\mathrm{T} \boldsymbol{P} + \boldsymbol{Q} = \boldsymbol{O} \]

みたいな式です。

これを「リカッチ」と書いている日本語の本が多い! アルファベットから素直に読めば「リッカチ」なのに。

ネットを調べても似たような感想を持つ人は少なくないようですね:

ちなみにWikipediaもすでに「リッカチ」になっている。

あと、リカッチをイタリア語風に”Ricatti”にすると「恐喝」と意味になるようです。恐喝な方程式とかマジでやめたほうが良い。

そうは言うものの

とあるように、確かにいまさら変えるのが難しいという考えがあるのは、まあ気持ち的には理解はできます。

川田昌克著「MATLAB/Simulinkによる現代制御入門」(p160)にいたっては

“Riccati”の発音は”リカッチ”よりも”リッカチ”の方が近いが、”リカッチ”と記している邦書の方が多いため、本書でもこれに従うことにする。

なんて書いてあります。確信犯! 分かっているけど、直さない。誰に忖度しているのか…。

もう、しれっと正しい「リッカチ」にしてしまえば良いと思います。戦前からの間違いなんて何を大事にしているのでしょう。 読者も「あれ」と思うかもしれませんが、気付かない人の方が多いんじゃないかな。

そもそも、間違っていると分かっているのに慣習で直さないのがカッコ悪いじゃないですか。

2020-08-03追記

調べられる範囲で制御工学の専門書の表記を調べてみました。

リッカチは少ないですね…。

リッカチ
実践ロバスト制御(平田光男著)
カルマンフィルタの基礎(足立修一・丸田一郎著)
リカッチ
システム制御理論入門 (小郷寛・美多勤著)
モデル予測制御(Maciejowski著 足立修一・菅野政明訳)
MATLAB/Simulinkによる現代制御入門(川田昌克著)著者は他の邦書の慣習にしたがって、あえてリカッチにしている
現代制御理論入門(浜田望・松本直樹・髙橋徹著)
非線形カルマンフィルタ(片山徹著)
新版 応用カルマンフィルタ(片山徹著)