(更新日: 2025年8月20日 )
目次
「この会社は離職率が低いんですよ」
以前ある会社を転職エージェントに「この会社は離職率が低いんですよ」とドヤ顔で紹介されたことがある。 当時の私は「へぇ〜、社員みんな幸せなんだな」と思った。 ……今考えると「この店は万引が少ないんですよ」と言われて「治安がいいですね!」と返してるのに近い。
さて、離職率が低い会社は良い会社だろうか。 答えから言うと「それは会社による」。── まあもう少し読んで欲しい。
離職の意味が違う
まず、日本的な会社と欧米(とくにアメリカ)の会社では離職の意味が違う。
日本の会社では、会社に育ててもらう意識はまだ強いだろう。つまり「お世話になる」感覚。つまり「お世話になった会社を辞める = 裏切り」。 仕事を変えるだけで裏切り者扱いは少し重い。
一方で、欧米型な職場は自分のスキル次第。だから「この職場は俺様のスキルに似合わない」と感じたなら次のステージを探す。裏切りではなくステップアップになる。
バージョンアップ込みか
この違いは、日本的な会社では勤続年数が増えるとともに役割が変わるの対して、欧米的な会社では「役割」に対して雇われているので、基本的に「役割」は変わらない点だ。
日本型の組織では、バージョンアップまで面倒を見る前提で雇っている。 右も左も分からない新人で入り、主任や係長(会社によって呼び名は違う)になり、課長・マネージャー、部長・GMになる。 この場合、バージョンアップが妥当かの判断も組織がやる。なので、簡単には首を切らない。
欧米型の会社ではバージョンアップは自己申告スタイル(昇格はあるにしても)。 「もうバージョンアップしたぜ」自己申告して、そのポジションに応募する。 「こいつには無理だ」と判断されれば首を切られる。そういう世界。
日本型と欧米型では離職率が低いとどうなる?
さて「離職率が低い」と良いのはどういう会社なのか。
日本型な会社であれば、「ここで骨をうずめても良い」と思えるのだから悪いはずもない。
一方で欧米型な組織で離職しないとどうなるのか。下手すれば10年以上同じ仕事をすることになる。 これを天職と考えるか、罰ゲームと考えるか。 実際、そういう人を私は知っているが、さすがにその人は10年以上たってから転職していった。
組織目線で見ても、10年間ずっと同じ上司と同僚。認めたくないだろうが、ドンヨリした職場になる。 これも実際知っているが、マジでそうだから。
キャリア観が違うと離職の意味が違う
結局、欧米型の場合は「転職=キャリア・アップ」だから「離職率が高い=悪い会社」とは言えない。 一方で日本型の場合は離職率が低いほうが良い会社と言えることが多いだろう。
つまり一概に離職率は会社の善し悪しの指標にならない。 冒頭の転職エージェントは、良いこと言ったつもりだったのかも知れないが、欧米型の会社の紹介としては怪談に近い。 キャリアップが無理ゲーな会社だと暴露しているのだから。
おわりに
つけ加えておくと、「離職率」は「◯年離職率」のように考えるのが適切なのだろう。 ただ「半年以内の離職率が低いんですよ!」とアピールされたら「良さそうな職場ですねー」と微笑みながら返してあげよう。