ギタリストが弾くジョン・コルトレーンの曲をまとめてみた

ギタリストが弾くジョン・コルトレーンの曲をまとめてみました。

ジョン・コルトレーンはアメリカ人のテナー・サックス奏者です(たまにソプラノも吹きます)。1950年代後期から1960年代後半まで活躍した人で、 マイルス・デイヴィスのグループではMilestones, Kind of Blue, Someday My Prince Will Comeなどで参加して、平行してソロ活動をしています。

演奏のスタイルは音が多くて、「オシャレ」な感じはしません。ぼくにはかなりメカニカルなフレーズに聞こえます。

また、マイルスのグループに最初に入った頃と退団後に2度目に入った頃ではプレイの感じがだいぶ違います。こうした進化からものすごい努力家で求道者的な演奏家といったイメージがあります。

コルトレーンの曲はいわゆる「コルトレーン・チェンジ」と呼ばれる、演奏者にはしんどいコード進行の曲で有名です。

Blue Train

まずはコルトレーンにしては割と素直なバップ路線の「ブルートレイン」。

1曲目のブルースからリラックスしているように聞こえてコルトレーンっぽくないかなと思ってしまいます。

とは言うものの、Moment’s NoticeやLazy Birdはコード進行が一筋縄ではいきません。 ぼくが学生時代に在籍したJazz研ではあまりセッションで取り上げなかったと思います。

Blue Train

Blue Train

Coltrane, John
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Moment’s Notice

Mike Stern / Standards

Mike Sternはマイルスがブランクから復帰したバンドで大活躍して一躍注目を浴びました。 クリーントーンのバップ・フレーズとディストーションを使ったロック的なチョーキングが混在するスタイルと言えば分かりやすいでしょうか。どのアルバムも金太郎飴的と揶揄されたりもしますが、ストレート・アヘッドなジャズでもコンテンポラリー・フュージョンでも対応できる実は凄いスタイルの持ち主なのです。

Mike Sternはコルトレーンをよくトランスクライブしているとインタビューがありました。

空間を埋めてしまうような演奏や練習の鬼のようなスタイルはコルトレーンと似ている感じはします。

この演奏はギタートリオ構成です。そのため空間が多いのですが、かえってベースがよく聞こえるせいか進行感やドライブ感があります。要所でコードワークもあって全体的にメリハリがあって、さすがです。

マイク・スターンといえば盛り上がりでディストーションを使う演奏が多いですが、このアルバムではディストーションはなしです。全体的にどちらかと繊細なフレーズが多い演奏に聞こえます。 並の演奏者がフツーに演奏しても、このようにはなりませんね。

Lazy Bird

Gメジャーという、ジャズの曲では珍しいキーという点で、すでに尻込みしたくなる曲です(ジャズは金管楽器が花形なのでフラット系が多い)。 メロディはどこかほのぼのしていますが、Moment’s Noticeと同様に頻繁にコードチェンジするのでアドリブは結構大変です。

Pat Martino / East!

East!は1968年のアルバムでPat Martinoのキャリアの初期のアルバムです。 Mike Sternよりももっと求道的なイメージがあるPat Martinoですが、この時期は 結構スインギーというかジャンプというかノリノリな演奏です。

このアルバムが好きという人が多いのも頷けます。フレーズは随所にマルティーノらしく息の長いフレーズがありますが、どちらかというとオーソドックスな「ジャズギター」な感じがします。Live!などではかなり怪しい雰囲気の調性を感じさせる演奏もありますが、この時期はまだマルティーノらしさを完成させる途上ということでしょう。

これとImpressionsでは演奏の趣がだいぶ違いますね。知らない人が聞けば同じ人の演奏とは思わないかも。

East

East

Martino, Pat
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Impressions

コルトレーンのこの15分間のソロは正直しんどいですね。

こちらの体調次第で聞き通せるときとギブアップするときがあります。まあ大抵聞き通せません。 こういうおどろおどろしい演奏は夏場の蒸し暑い夜にぴったりです。

Impressions (Dig)

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Coltrane, John
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Impressions

Wes Montgomery / Smokin’ at the Half Note

Wes は右手の親指で弦を弾くスタイルと、オクターブ奏法で有名です。 Wesの場合はソロの「型」があって、まずはシングルノート、その後オクターブ奏法、そしてコード・ソロで締めくくることが多いです。

Wesの場合、オルタード的でアクが強いフレーズが特徴的でメジャー感を強く感じます。なのでモーダルなImpressionは何となくピンとこない予感がしたものです。

WesのImpressionsの録音はいくつかあります。 やはりというか、ぼくはHalf-Noteのバージョンがあまり好みではないですね。Wesのソロの「型」もモーダルな曲はマッチしていない気がします。

ちなにみウィントン・ケリーは全然ソロを弾いてないです。なんでかな。

ハーフ・ノートのウエス・モンゴメリーとウィントン・ケリー VOL.2

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ウェス・モンゴメリー&ウィントン・ケリー
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Pat Martino / Consciousness

こういう演奏がPat Martinoのイメージですね。正確なピッキングで弾きまくる感じ。

これは全盛期と言っていいでしょう。フレーズは絶好調でグイグイきてます。よどみなく流れて、それでいてドライブ感があって憧れてしまいます。ソロは意外と短いので、コルトレーンのようなおどろおどろしさは少なめで聞きやすいです。

Pat MartinoのImpressionsはエレキベース+エレピのせいかクロスオーヴァー風味がします。

コンシャスネス

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Consciousness / Live!

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Giant Steps

ジャイアント・ステップス<SHM-CD>

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Giant Steps

「コルトレーン・チェンジ」の曲です。あまり演奏したくない曲の筆頭でしょうね。 Eb, G, Bのキーがほぼ不規則に繰り返す(しかも各キーの小節の長さがばらばら…)。

この曲に比べたらMoment’s Noticeのコード進行は易しい気もしてきます(全然易しくないけどね)。

Greg Howe / A Guitar Supreme Giant Steps in Fusion Guitar

Giant Steps

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テクニカル系のギタリスト、グレッグ・ハウのGiant Stepsです。

かなりのスピードで弾ききっている感じはします。テーマの弾き方は好みが分かれそうですが…。

Countdown

Giant Stepが3-tonic(キーが3つ)なのに、この曲はキーが6つ! 若い頃のぼくは頑張ろうと思うでしょうが、みなさんはどうでしょう。

Allan Holdsworth / None to Soon

アラン・ホールズワースは独特なコード感とレガートプレイが特徴です。 ピッキングしないわけではないですが、スピード・プレイの時はハンマリング・オン/プリング・オフを多用して、滑らかなサウンドで超絶技巧ソロを聴かせてくれます。

自身が作曲したも独特のハーモニー感、メロディーの曲です。クリーン・トーンでのコードワークが美しく、いわゆるジャズギターとは別の独自な世界を作り上げています。独特の世界を一人で作ってしまう天才肌のアーティストですね。

いわゆるジャズギター的な音楽を演奏しないので、コルトレーンの曲を演奏しているのは最初意外でした。でも聴いてみると、新しい音楽の開拓という点では共通する姿勢があるわけです。コルトレーン・チェンジをホールズワースがどう料理するのか、という観点で聴くのが良いのでしょう。

ホールズワースによるCountdownは、のっけから浮遊感たっぷりなソロです。テーマは美しいクリーン・トーンで真似したくなる繊細なCountdown です。原曲とはかなり雰囲気が違います。ホールズワース・ワールド全開です。

ホールズワースがどの程度コルトレーンを聞いていたのか興味ありますね。 Wardencyffe Tower “5 to 10″のエンディングでは “Jazz? … I hate Jazz!”なんてセリフがありました。

NONE TOO SOON

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ALLAN HOLDSWORTH
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Mr. PC

Eric Johnson / Europe Live

テキサス出身のギタリストエリック・ジョンソンはロック系・ブルース系の演奏で知られます。 ブルースと言ってもあまり泥臭くなく、ブルースをルーツの一つとして持つというのが正しいでしょう。

アメリカのミュージシャンはジャンルの垣根が低いというか、違うジャンルの曲も演奏出来る人が多い印象があります。エリック・ジョンソン はブルースがルーツにあるようですから、マイナーブルースのこの曲は敷居が低いのかもしれません。

演奏の雰囲気はどことなくクロスオーヴァー風。ギターサウンドは若干ファズ風味で、それがクロスオーヴァー風味にもつながっている感じがします。

エリック・ジョンソンのソロは最初の3分です。ほどほどの長さで上手くまとめていてマイナーブルースの演奏としては参考になる点も多いのではないでしょうか。実際、マイナーブルースは構成や展開が難しいと思います。フレーズや展開の引き出しの多さが露呈しやすい感じはします。

EUROPE LIVE

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JOHNSON, ERIC
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Coltrane’s Sound

豆知識ですが、コルトレーンの人気が出た後にレコード会社が勝手に録音をまとめてリリースしたものが多数あります。このColtrane’s Soundもその一つです。

Coltrane's Sound

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Coltrane, John
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Equinox

テーマがシンプルなマイナー・ブルースです。これ以上シンプルにならないようなテーマです。

Mike Stern / Smart Moves (Harvie Swartz)

Mike Stern はこの曲が好きらしいですね。一つはベーシストのハーヴィー・シュワルツ(今はHarvie Sという名義で活動しているようです)のアルバム”Smart Moves”に収録されています。残念ながら廃盤で入手が難しいですが、マイク・スターンの演奏は素晴らしいです。 このSmart Movesは1986年リリースでマイク・スターンがDownside Upsideをリリースした時期の録音です。マイク・スターンがメジャーレーベルからソロデビューした頃で、ぼくはこの時期の演奏が大好きなのです。

Equinoxは前半はクリーントーン、後半はディストーションというマイク・スターンお決まりの構成ではありますが、ディストーションはクランチ気味で少し趣が違います。ベースソロのバッキングではボリューム奏法やストロークカッティングなどを多彩に駆使して、マイナーブルースらしからぬドラマティックな構成に聞かせてくれます。この辺りも参考になりそうです。

A Love Supreme

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Resolution

宗教色が強い”A Love Supreme”です。というのもコルトレーンが神に捧げた組曲のアルバムだからそう聞こえるのも納得がいきます。真面目に聴くときは演奏のエネルギーを受け止められるように体調管理が必要ですね。

Resolutionは”A Love Supreme”の2曲めで、このアルバムとしては聴きやすいテーマでしょう。

John Scofield & Bill Frisell / Bass Desires

マーク・ジョンソンのベース・ディザイアーズに収録されたバージョンです。 ベース・ディザイアーズはジョンスコとビル・フリゼールのツイン・ギター構成が特徴です。 よくある「ギター・デュオ」というようなフォーマットではなくて、線で描くジョンスコ、空間と面で描くフリゼルというようなイメージです。スタイルの違うギターの美しいバランス感覚と異なる緊張感が織りなすアンサンブルが楽しめます。

このベース・ディザイアーズの演奏は原曲の雰囲気を残しながら、浮遊感5割り増しで単純にカッコいい演奏です。

ピアノがないせいか、とても空間が多いのに、音の密度がめちゃくちゃ高く感じられます。 これはピーター・アースキンとマーク・ジョンソンのリズムの影響も大きいでしょうね。

ジョンスコのソロも抜群に良いのですが、ビル・フリゼールのソロはぶっ飛びです。 繊細に描いたすばらしいデッサンの横にアクション・ペインティングしてしまったようなインパクトですね。 このフリゼルのソロの後では、それくらいジョンスコのソロがかすんでしまいます。コピーしたくてもこれは無理そう…。

BASS DESIRES

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Ballads

Ballads (+ 7 Bonus Tracks)

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John Coltrane
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Ballads

和田アキラ

ちょっと反則っぽいですが、和田アキラが Ballads をまるごとカバーしています。

ジャズを期待するとがっかりするかもですが、和田アキラの別の一面を知ることが出来ます。どこまでも和田アキラ節です。

和田アキラのファン向けですな。

Ballads

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おわりに

コルトレーンの音楽はギタリストとの相性が良さそうですね。 テクニカルだけではなく、ミュージシャンシップ的な部分が通じるものがあるのかも知れません。

コルトレーンのmp3のアルバムは300円から600円くらいで入手できます。 たまにはアルバムを通じてどっぷり浸かるのも良いです。

学生の頃はコルトレーンのソプラノ系の演奏、チムチュムチェリーやマイ・フェイバリット・シングスを蒸し暑い真夏に聞きまくったのが良い思い出です。