パット・メセニー・グループのアルバムでどれが一番好きかと聞かれたら、このアルバムですね。 “レター・フロム・ホーム”や”スティル・ライフ”、”ファースト・サークル”も捨てがたいですが、やはりこれが一番です。
このアルバムはこの前の2枚と比べると、だいぶ陰影が豊かになっています。 『おどろおどろしさ』が出てきて、フォーキーな部分は影を潜めています(特に”Barcarole”や”Offramp”)。
このアルバムのポイントは、スティーブ・ロドビーの参加と、ギターシンセを使いはじめたことでしょう。
スティーブ・ロドビーの参加によって、ライル・メイズとともに黄金のトライアングルが形成されたという意味では、パット・メセニー・グループの大きな転機だと思います(ライル・メイズ、スティーブ・ロドビーについてが述べているパット・メセニーのインタビュー)。
ギター・シンセはリード楽器として使われて、方向性というか、個性が確固としたものになりましたね。 トランペット的なサウンドで全編弾きまくる”Are You Going with Me?”は名曲・名演です。 “Offramp”はどちらかと言えば前衛的なサウンドですが、意外とききやすい。
ライル・メイズのプレイで一番好きなのが”Au Lait”のソロの部分です。 この曲はギターソロも美しいですが、そのあとに続く繊細なピアノ・ソロが特に美しい。なんど聴いても感動的です。 ドラムの繊細なシンバル・ワークも聴きどころ。この曲のドラムはほとんどシンバルしか鳴ってないな。
ギターのサウンドも、トーンを絞った柔らかさが強調されたサウンドになって、後のサウンドにだいぶ近い原型がうかがえます。 “James”も名曲・名演ですね。テーマはほのぼのして優しいのに、ギターソロの後半では倍テンでノッている風でドライブ感がある。 その後のライル・メイズのソロも歌っています。
“James”に加えて、”Eighteen”は前作の流れを汲んでいる雰囲気の曲ですね。 いかにもライル・メイズというシンセサウンドが特徴的です。 ただベースが違うせいか、雰囲気が前2作ほどノリノリな感じがしない。
今聞き返しても、まったく古さを感じないアルバムです。