ファンクなジョンスコならこの1枚: Blue Matter / John Scofield

ファンクでブルージーなジョンスコを聞きたいならこの1枚です。

似た路線でLoud Jazzもありますが、ぼくはBlue Matterの方が好きかな。Loud Jazzは曲はキャッチーなものが増えたけど、似た曲調が多いような。というか二匹目のドジョウ的な感じが強くて…。

話題を戻すと、デニス・チェンバースが一躍脚光を浴びたのはこのBlue Matterです。

ジョンスコの特徴

ジョンスコはジャズギタリストですが、いわゆるジャズギタリストの範疇に留まらないアーティストです。特徴としては

常に歪みを使う

ProCo Rat distortionを好んで使います。Rough HouseやLive77でも歪ませていますが、しっかり歪んだ音です。

Ratといえばハード・ロック系で使っている人が多かったので、ジョンスコが使っていると知った時は意外でした。

実際Ratを使ってみると、フィルターが独特で、意外と使いやすいのですよ。割とナチュラルな感じを出すことができます。(手放すのではなかったと後悔…。)

コーラスも強めで、サウンドのアクは強めでしょう。このアルバムでのギターはステレオ感が強いです。

チョーキング(ベンド)が多め

ジャズ系のギタリストはチョーキングをしない人が多数派です。

そもそもフルアコではチョーキングをするジャズギターはないと言って良いでしょう。

ダイナミクスが大きい

ピッキングでボリューム・アタックの強弱を多彩にコントロールしています。ブルージーなプレイで顕著。

コピーしていても、すごく勉強になる点です。他のジャズギタリストではあまり注意しない点です。

ダイナミクスが大きいのは、歪ませていることが大きく影響していると思います。

レガートプレイ

基本的にフル・ピッキングはしない。ハンマリング・プリングを多用してます。

ただ、異弦同フレットのフレーズ的なものはどうやっているのか分かりませんでした。 ピッキングなのか、同じ弦でストレッチしているのか、絞り込めなかったですね。 (ジョンスコは手が大きいのでストレッチ的なアプローチも苦にならない可能性はあります。)

ブルースのバックグラウンド

BBキングを心の3大ギタリストの一人に挙げています。チョーキングの多用と相まって、ブルージーなフレーズが特徴的です。

ただ、いわゆるブルースギター的な泥臭さが希薄なのは、ビブラートが少ないこと、ジャズ的な音使いとノリの正確さのせいかなと思います。

アーティキュレーションが豊富

レガートなプレイスタイルとも関係しますが、スライドも効果的に使います。

ノリが粘っこい

ブルージーなプレイで顕著ですが、アップテンポの曲でも若干後ろノリ。でもコケることはない。

オルタードやコンディミ系のフレーズを多用する

オルタード・スケールやコンビネーション・ディミニッシュ・スケールをよく使います。

ぼくの印象では、思ったほどコンディミ系が多くなくて、もろオルタードというフレーズの方が多いと思っていました。

どこがファンク?

書いてなんですが、いわゆるファンク系とは違って、グラント・グリーンのLive at the Lighthouse的なファンクですグラント・グリーン・ライヴ・アット・ザ・ライトハウス。リズム隊が重量系なデニチェンとスラップ中心のゲイリー・グレインジャーで、いわゆるオシャレ系なフュージョンではないです。The Nagのアドリブなどは70年代フュージョン的な香りすらします。

各曲の紹介など

ハイラム・ブロックがリズム・ギターで参加しています(Blue Matter, Now She’s Blonde, Make Me)。

Blue Matter

のっけから怪しい雰囲気で、その後の重たいドラムがぞくぞくしますね。そこにファンキーなハイラムのリズム・ギターが絡んでご機嫌です。

ソロはタメが効いてたまらん感じです。テーマに戻る瞬間が鮮やかに切り替わるのが好きです。

Trim

アップテンポでハードな曲です。テーマが都会的なカッコいい系です。

ジョンスコ・フレーズ全開なソロです。 このソロを全部コピーすると、ジョンスコの特徴的なフレーズのかなりの部分を習得できそうです。

ミッチェル・フォアマンのキーボード・ソロも熱いです。

Heave Hill

オルガン風なキーボードでいなたい雰囲気で始まる曲です。テーマは優しさ溢れるメロディです。

この、ほのぼのしたメロディはジョンスコの魅力の一つです。とんがりフレーズのイメージだと意外かも知れませんね。

So You Say

ダンサブルで楽しいメロディです。大好きだったので、大学時代はアコースティックなドラムとベースでコピーしたものです。

ソロは歌っていて気持ちいいです。ジャズ的なフレーズとか、どうでもよくなる「歌」があります。

このアルバムではギターソロではオクターブ下の音も微かに聞こえる気がしますが、そう思うのはぼくだけかな…。

ライブアルバム「Pick Hits」でも取り上げています。

Now She’s Blonde

“She”というのは娘さんなのか、などと妄想しながら聴くのも楽しい曲です。優しい気持ちになれるテーマですね。

リラックスしたフレーズが多いです。そんな中でも跳躍の大きい音使いで単調にならないところは参考になりそうです。

Make Me

リズムが重たいファンクナンバーです。キーボードはオルガン風で雰囲気はとても好きです。

ソロは短めで少し物足りないかな。

The Nag

アップテンポな1発もの系のチューンです。

1987年のギターマガジンにタブ譜が載っていましたので、コピーしたことがあります。この曲もジョンスコ・フレーズ全開なので、コピーすると参考になります。

ただ、ワンコード系のせいかソロの前半では、各フレーズの入り方が少し単調になっている部分は感じます。後半集中力が増しているように思えます。

Time Marches On

しっとりした曲調ですが、不思議な雰囲気のテーマです。

イントロはギターソロで始まります。こういうダイナミクスの大きい弾き方はジョンスコの特徴の一つと思います。

オクターブ奏法を聴くことができます。ジョンスコのオクターブはピックと中指で弾くスタイルです。

まとめ

ファンクだけでない、ブルージーな部分が多分にある曲が多いですね。Blue Matterというタイトルが相応しい。

曲調もバラエティに富んでいるし、ギター好きにも楽しめるアルバムと言えるでしょう。ジョンスコを最初に聴くアルバムとしてもおすすめします。

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