国産のエレキギター・ベースブランドのフェルナンデスが倒産したニュースがXに流れて、それに反応しているポストも散見した。
自分の最初のギターはフェルナンデスのリバイバル・シリーズのストラト・タイプだった(RST50-57)。 フェルナンデスと言えば、俺の最初のギター。
楽器業界そのものは、一時期のブーム以外は好況とか不況とかいうわけでも無いように思うのだが、どうだろうか。 素人ながら、フェルナンデスの経営が芳しくなかった理由はなんとなく想像できる。
自分の感覚だとフェルナンデスなど日本の国内メーカーが最も元気だったのは1980年代までだったと思う。 (売上げは90年代のほうが良いようだが…。)
1980年代やそれ以前は、FenderやGibsonは高嶺の花の存在で、初心者が手に取るのは国内メーカーだった。 アーティスト・モデルのコピーも国内メーカー品でそれなりのものが入手できた。 海外アーティス・モデルのコピーはフェルナンデスは頑張っていた領域でもあった(今となっては見た目の再現が重視のようにも思えるが)。
1980年代と今の大きな違いは、今どきはFenderとかGibsonとかを「フツーに買う」ようになったことだろう。 特に何をはともあれFenderやGibsonを買う人は多いと思う。 いずれもラインナップが豊富になって、価格の点では以前と比べて買い難さは緩和されている。
さらに初心者向けブランドとして、FenderであればSquireがあるし、Gibsonの場合は廉価バージョンの位置付けのEpiphoneもある。 それらは堂々と”Stratocaster”,”Telecaster”, “Les Paul”モデルを名乗ることができる。
つまるところ1980年代の状況と比較すると、今どきはFenderやGibson、PRS以外の量産メーカーは「売り」が非常に難しい状況になった。 楽器店に行けば、展示されている商品のラインナップを見ると良い。 30~40年前と比較すれば、楽器店の店頭で展示されているフェルナンデスのモデルは圧倒的に減った。
フェルナンデスに限らずトーカイやグレコのストラト・タイプやレスポール・タイプを敢えての買うのは、FenderやGibsonのモデルと差別化された点(主に演奏性の観点)の良さが分かっている人や狙って買う人だけになっている。 値段が高い価格帯では、Fender、GibsonやPRSも検討するようになるし、そうなるとネーム・バリューやブランド的にはフェルナンデスはかなり不利だ。 特に自社工場を持たないフェルナンデスなどは商品企画で強みを打ち出す必要がある。 フェルナンデスは、なるほどいくつか個性的な商品を生み出してきたが、それでも綱渡りな経営だったということではないか。
アイバニーズは、デザインや演奏性などの点で特定ジャンルでは選択肢の筆頭に挙がる地位を確立している。 そういう点で差別化にある程度成功している。 もともとアイバニーズは独自路線のブランドであった。 (他方、グレコやトーカイなどは本家モデルあるいは本家以上のクオリティのコピーモデルで一世を風靡した。 それが仇となり、FenderやGibsonによるコピー品対策後は元気がなくなってしまった。)
アイバニーズと比較すると、フェルナンデスはブランド・イメージや方向性をユーザーの立場からしても掴みづらい。 そうしたブランディングや方向性付けがうまく出来なかったフェルナンデスは、今回のような残念な結果となったのだろうと想像する。
トーカイも一回倒産していると思う。フェルナンデスも復活してもらいたい。