1977年のアル・ディ・メオラのアルバム。 クロスオーバーのギター・アルバムとしては外せない名盤です。 1976年はジェフ・べックの”Wired”がリリースされていて、クロスオーバー/フュージョンの盛り上がりの時期ですね。
まずキタ—のサウンドがとても魅力的です。最初聴いたときはハード・ロックみたいなギターサウンドだと思いました。 タイトルが”Race with Devil …”とか、ちょっと意味が分からなかったし。
ジャケットにあるレスポールはピックアップがディマジオの”Super Distortion”らしいですが、それっぽい中域がパワフルなサウンドです。 アンプの箱鳴りが聞こえるようなかなり滑らかさを感じる歪みで、とても魅力的です。 70年代中期だと、いかにもペダル・ディストーションを使ったレンジが狭い歪みがありがちなのですが、この歪みはレンジが広いままでナチュラルさも残っています。今聴いても、古さをあまり感じない。
クリーン・トーンも飾り気はないですがハンバッカーらしい太い音で、こちらも良い音です。 ジャケットのレスポールはノブが一つ外れてるのは意図的なのかな…。
ハードなギター・インストだけでなく、”Midnight Tango”のようにドラマチックな曲もあったりして、全体としてとてもバランスが良いです。 “Mediterranean Sundance”はスパニッシュなテイストあふれる名曲です。パコ・デ・ルシアとのかけあいも楽しい。
このアルバムはアル・ディ・メオラのギターのスタイルも分かりやすくて、名刺代わりと言っていいのではないかな。 アル・ディ・メオラはフル・ピッキングなスタイルです。これを真似た人は当時多かったでしょうね。
和田アキラやSpace Circusの佐野行直も、アル・ディ・メオラっぽいプレイの曲があります。 ギターの弾き方だけでなく、曲調まで似ている曲がフュージョンではあります。影響力が相当なものだったと想像できます。 スピードが云々よりも、ミュートしながらのピッキングの迫力とか粒立ちのような部分は強烈なオリジナリティです。
ドラムはスティーブ・ガッドとレニー・ホワイト、ベースはアンソニー・ジャクソン、キーボードがヤン・ハマー、ミンゴ・ルイス、バリー・マイルズ。 アンソニー・ジャクソンのベースはピック弾きだと思われますが、硬質なベースのトーンがこのアルバムの雰囲気を作っています。 キーボードソロはいかにもヤン・ハマー的なものが多くて、キーボード・ソロのときはなんとなくジェフ・ベックの”Wired”を思い出してしまいます。