同窓会にログインできませんでした

同窓会──それは懐かしさ、気まずさ、がっかり、そして後悔がフルコースで出てくる宴である。 行きたくなる理由を探してみたが、見付かったのはブログのネタぐらい。

懐かしさ

たった1〜2年だけでも同じクラスにいただけでも、毎日顔を合わせていたなら、どこか懐しさはある。 たとえそれが苦手な相手であっても。

いや懐しさというより、古いHDDからデータをサルベージできた時の感覚なのかも知れない。 そして、懐しさはすぐに別の感情で上書きされる。

気まずさ

顔は分かるけど、名前が出てこない──「あのファイルはどこにあったか場所が思い出せない」に近い状態。 「えーと、(もごもご)だよね?」と相手の反応をうかがいながら、ヒントになる情報を探る。

結局「ごめん、名前なんだけ?」と訊いてしまう時の気まずさ。

ようやく名前は思い出したが、どうも話が噛み合わない。 「あれ、こいつとは絡みがなかったっけ?」と思うが、そうじゃない。私は基本的に誰とも絡んでいなかったのだ。

がっかり

憧れていた子がその後どうなったか──好奇心と恐怖心がせめぎ合う。 そんな期待と諦めの複雑な気持ちは、同窓会のドアを開く前まで。

そして現実は、ウン十年の平等な時間税がきっちり徴収された姿でせまってくる。 ああ、私もハードオフで見かける骨董品PCのように見えるのだろうか。

後悔

乾杯も終わり、場が温まるころには、もう帰りたい。 運動会や修学旅行もソロ活動が得意だった私は、話題についていけない。

話題がないと、その場にいない元クラスメートのゴシップの話になったりする。 世の中には、知らないほうが良いこともある。

愚痴とコンプレックス

進学校だったのに、進路や仕事の話になると「成功者」「停滞組」「地元から出ない派」と分類されて、愚痴とマウントのラリーが静かに始まる。

東京組は「クラウドに移行した気分」で話し、地元組は「オンプレで粘ってる誇り」をにじませる。 なんだか外注と内製の違いみたいな会話のようだ。

昔のイメージのまま話される

残念ながら高校生時代のキャラ設定は、後で変更できない仕様らしい。

黒歴史として封印したはずなのに、彼等の中ではまだ設定が有効らしい。 データごと削除するか、今の設定で上書きさせて欲しい。

老人ホームの会話?

話題の多くは「高校時代はよかった」。 つまり裏を返せば「今がイマイチ」なのかもしれない。

毎年集まって同じ話を繰り返すのは、もはや無限ループ状態と言えよう。 老人ホームの予行演習をやっているような錯覚すらある。 そのうちに病気自慢、孫の話題、そしてリハビリの話題になることが既定路線。

おわりに

7年ほど前に出席して悟った。同窓会は「友情の再確認」ではなく「パッチが適用できない黒歴史とバグの再起動」だ。 もうしばらくは行かなくて良いし、そもそも招待も来ない。

もやは私は「Windows Vista」のような存在なのだろう。 派手に登場したものの、使いにくいと評判になり、誰もがすぐに忘れた。

「そういえばそんなのあったな」と思い出されることはあるが、 二度とインストールしたいとは思われない。それも私らしいのかも知れない。

更新履歴

2025-08-17 全面書き直し・タイトル変更

2024-08-05 修正

2017-09-23 修正

2016-08-28 初出