(更新日: 2025年8月16日 )

日本語の一人称はとても多彩で、どれを使うかで「俺って個性派」を演出できるかも知れない。 でも残念ながら、読み手がそのまま受け取るかは別問題。
ここでは、メールで見かける一人称について考察してみたい。
目次
「小生」「小職」
たまにメールで自分のことを「小生」や「小職」と書く人がいる。
……いるんですよ、本当に。
「小生」はかなりのレアキャラだが、「小職」は意外と見る。 「小職」には最初に就職した会社で遭遇したが、使っていたの30代前半の人だった。 「この人、普段から”御意!”とか言うのかな?」と思ったものだ。
「小職」ってなんか気取った感じがするなあと思って調べてみると、もともと官職に就いていた人が謙(へりくだ)る言葉。 基本的に目下に使う言葉らしいので、メールを貰う瞬間にこちらが目下になる仕様だ。 “謙譲”感が薄味なのは、そういう由来があるせいかも知れない。 わざわざ使う意図は小一時間問い詰めたい衝動に駆られる。
「小生」はかつての上司が使っていたが、どこか”ふざけた”雰囲気はある。 ビジネスメールで書かれると、はて冗談なのか本気なのかと疑いたくなる。 なお「小生」をビジネスで使うのは御法度という考え方もある。 「なんだか”文豪ポーズ”を決めてきた空気読めない人」と思われたいなら、使ってみるのも良いだろう。
超マイナー「下名」
少し変わった一人称として「下名」というものがある。読み方は「かめい」。
※「しもな」ではない。
私が知る限り、これを使う会社はレア中のレアだ。 これが分かるのは、かつてその会社にいた証拠。
一般人にはほぼ通じない。わざわざ使っても、謙譲語であることすら伝わらない。
ちなみにその会社では、よく「貴方・弊方」、「貴部・弊部」という語がメールで飛び交っていた。 とても堅い雰囲気でオフィシャル感がよく伝わる。
実際、たいていは要求を出す相手に貴方・貴部を使う。 だから相手を持ち上げているというよりも、むしろ挑戦状の宛名である。
狙いすぎて空振り
結局のところ「小職」や「小生」は個性的なようで、実は壁を作ってしまう表現だ。 下手すると「難しい言葉を使ってみたかったのだろうね…」と思われる。 もしも30代が「小職」などと書いてくるなら、こちらも「拙者」で返してあげるのが良いのだろうか。
結論
仕事のメールでは「私」で十分だろう。無理に“官僚風”や“文豪風”を狙わなくてもいい。
どうしても個性を出したいなら、署名欄を凝るぐらいにしておこう。