「管理職」になった人は読んでみることをお薦めします。これから管理職になる人も、決して損はないと思います。 自分がやって欲しかったマネジメントばかりですよ。
アメリカの職場での従業員・マネジャー逹の記録から、生産性と創造性に関するリサーチを行った結果をまとめたものです。 論文だと思って読むのが良いかも知れません。ボリュームはありますが、読みやすいと思います。
マネジャーが目指すこと
マネジャーが目指すのは「メンバーのパフォーマンスを引き出す・上げること」です。 メンバーのパフォーマンスはメンバーのインナーワークライフに依存しています。 インナーワークライフを職場でマネージするのがマネジャーの仕事、というわけです。
著者らは「進捗の法則」を発見しました。それは「進捗」がインナーワークライフに最も影響力があるということです。 インナーワークライフに影響を与えるのは三つあり、残りの二つは「触媒ファクター」と「栄養ファクター」です。
マネジャーの仕事
著者らが言うマネジャーの仕事は以下の三つです:- やりがいのある仕事が前に進むように支援する(進捗の法則)
- 仕事がうまくいくよう支援する (触媒ファクター)
- 人が気持ちよく働けるよう支援する (栄養ファクター)
マネジャーがやるべきこと
進捗の法則に関して
やりがいがある仕事とは何か
大切なのは、自分の仕事が何かや誰かにとって価値のあるものだと自分が認識すること
やりがいを失わせる四つの道
- 部下に、仕事やアイディアが相手にされていないと感じさせること
- 部下に、仕事に対する当事者意識を失わせること
- 自分たちの仕事が日の目を見ないと疑念を抱かせること
- 部下に、自分にはもっと能力があるのにと感じさせること
この四つの道は経験ある人も多いのではないでしょうか。
触媒ファクターに関して
チームリーダーとして取るべき行動例
- どのような形であれチームの仕事に関連する可能性のある情報を定期的に集める
- プロジェクトに対する重要な決断をする際はチームを参加させる
- プロジェクトに対する情報やサポートの重要なソースとなり得るチーム外の人びととの関係を構築する
- プロジェクトを売り込む。優れたプロジェクトが脅威に晒された時は戦う
チームリーダーとして取るべきではない行動例
- プロジェクトに関連する情報をチームに伝えない
- マイクロマネジメント。仕事を実行するメンバーの自主性を押さえつける
- 自分の発言や、特に自分の働きぶりが悪い手本となり、チームのモチベーションや意欲を低下させる
- 問題解決を避けたり、自分の臆病や傲慢から問題を引き起こす
- 明確で、適切で、やりがいのある任務や目標を提供しない
思い当たる上司はたくさんいますね…(溜息)。
栄養ファクターに関して
チームリーダーとして取るべき行動例
- 部下と部下の仕事を尊重していることを示す
- 部下たちの達成を評価し、讃える
- 必要なときに、部下たちへの感情的なサポートを提供する
- チームの友好関係や仲間意識を育む機会を作る
チームリーダーとして取るべきではない行動例
- 否定的で、無礼で、恩着せがましい行動を取る
- メンバーやプロジェクトへの無関心を示す
- 役割、責任、正式な関係性を曖昧にする、あるいはそれらを闇雲に変更する
これも思い当たる上司はたくさんいますね…(溜息)。
まぁ、これらを読んで落ち込む必要はありません。 この本のリサーチの結果、ここに書いてあるマネジメントは5%の管理職しか出来ていなかったくらいですから(笑)。
管理職は全員読むべき
私の狭い経験から言っても、世の中の管理職は「管理」と「マネジメント」を分かっていない人がほとんどだと思います。 「管理」というと、プレッシャーをかけることしか出来ない人、何もしない人、「進捗をフォローする」ことが管理することだと思い込んでいる人、くらいですね。 歳をとればマネジャーは自然に出来るようになるとでも思っているのでしょうかね。
「課長」本をいくつか読みましたが、日本人が書く本は「私はこうした」的な自分の経験談しかなかったです。 これらは間違いとは言えないですが、では「マネジャーの仕事って何なの?」という答えはずばり出してくれる本ではなかった。 (日本人は体系化するのが苦手なんでしょうかね。)
この本は、幅広い業種・会社・マネジャー・担当者に対してリサーチし、良い面・悪い面を客観的に調べています。 そして、「マネジャーの仕事はこれだ」と明確に示しています。この点が他の本との大きな違いです。 ベテランの管理職の人も読めば、自分のスタイルを見つめ直すきっかけになると思います。というか、全管理職は必読でしょう。