はじめに
私は企業で主に研究活動に従事していますが、開発の経験もあります。 そういった経験から開発と研究について簡単に整理してみようと思ったのが、この小文を書こうと思ったきっかけです。
企業では、よく「研究・開発部門」というように「研究」と「開発」とをまとめて呼んだり、扱ったりすることがあります。 ここでは、(どちらかと言うと狭義の)「研究」と「開発」の違いについて述べようと思います。 というのも、今まで「研究とは何をすることか」、「開発は何をすることか」について先輩方から教わった経験がないのです。 企業や大学で研究・開発に従事している方々でも、そういった事をあまり考えていないのではないかと思います。
研究とは何か
研究とは何かというと、「調べること」と言えます。これは私のオリジナルではありません。 本で読んだものですが、誰のどの本だったかが思いだせません。 ミグダルだったか、飯島澄男だったか、お教え頂ければ幸いです。
良い研究とは何か
では良い研究は何かというと、「よく調べること」と言えます。これもその本に書いてあったと思います。 例えば、ある仮説を立てて、それが正しいことを実験等のデータを用いて調べることです。 理論的な研究は、その理論が実験データを説明できるかを調べることです。 実験的な研究は、ある仮説が予言する事象・現象が正しいかをデータをとって調べることです。
研究の最終ゴールは調べ尽くすことになります。 ある仮説が正しいことを、あらゆる条件について調べて、仮説が成立する条件を導くことで、その研究はまとまります。 よい論文は何かというのは「よく調べられているか」という観点で考えると分かりやすいと思います。
開発とは何か
開発は何かというと、私の考えでは「完成すること」と思います。 開発とは、ある仕様(あるいは要求)の物事をある時期までに完成させることです。 物事というのは、製品であったり、サービスであったりします。 完成しないと、開発完了にならないので、あながち間違いではないと思います。 もっとよい言い換えがあるかも知れませんので、お教えいただければ幸いです。
良い開発とは何か
良い開発は、仕様を満たす物事を、納期に間に合わせて完成させることです。 仕様を決めることも開発の活動に含まれます。 良い仕様は、過不足なく要求を満たし、かつ、納期内に実現可能なものでしょう。
開発と研究
上で見たように、開発と研究はそもそも指向が異なります。
研究は調べることが主ですので、スケジュール感が弱くなりがちです。 というのも、「いついつまでにこの点を明確にします」ということが約束しづらいテーマも往々にしてあるからです。 一方、開発は仕様・納期を満たすことが主ですので、コスト等の技術的以外の要素からも影響されます。 ですので、研究指向が強い人が開発に馴染めなかったり、逆もありますし、また両方できる人もいます。
だからと言って、研究と開発がまったく別々というわけでもありません。 開発のフェーズによっては、特に開発初期や探策期などでは研究的な側面が強くなる場合もあります。 研究でも、闇雲に調べる訳ではなく、ある程度マイルストーンやその達成時期を設定しますから、開発に似た線表を引くことは普通にあります。
ただ、上述のように少し整理してみると、(特に企業における)研究・開発活動の方向性が明確になる場合もあると思います。