Wes Montgomery のアルバムで1枚選べと言われたら、まずはこれです。
捨て曲なしです。ギターのジャズ・アルバムとしては1,2を争うと思います。
最近いろいろなアルバムを通して聴くようになって聴き直していますが、これは良いです。
久しぶりに聴き直すと、意外とブルーノート・ペンタトニック的な音使いが多い印象です。 (いわゆるブルースで使うようなペンタトニック。)
この音使いを泥臭いと思うか、親しみやすいと思うかは、聴く人によりますね。ぼくには親しみやすいです。
目次
曲の紹介
Airegin
ソニーロリンズの曲ですが、ギターでやるのは珍しいと思います。
ウェスといえば、ギター三段活用– 単音ソロ-オクターブ奏法-コードソロ–。 この曲ではアップテンポの三段活用が聞けます。ウェスのグイグイくる系の演奏の代表ですね。
D Natural Blues
何がNaturalなのか分かりませんが、キーがDのスロー・ブルースです。
ジャズだと管楽器がメインだったりするのでフラット系(楽譜の調性)のキーがフツー多いのですが、これはシャープ系です。
いかにもジャズギターなブルースが聴けます。スロー・ブルースなのに、オクターブ奏法の部分はかなり飛ばしてきます。マジすげー。ああいうハーモニー感が自然に出るようになるとジャズギターが弾けている感じがするのかなー、なんて思ったものです。ちなみにネット上には、ギターのコピー譜が見つかります。
とてつもなくマニアックなネタとして、川西蘭の処女作「春一番が吹くまで (河出文庫 140A)」にこのD Natural Bluesが登場します。だからどうした、ですが、この小説を読んでこのアルバムを買ったのが高校生のぼくです。痛いなー。
Polka Dots and Moon Beams
オクターブで弾くテーマがとても優しい感じです。
テーマの歌い方の参考にしたい。スタンダードのテーマをギターで弾くうえでの、一つのスタイルと言っていいでしょう。あんまりオクターブで弾く人は多くないですが。単音で弾くよりも、説得力が増す気はします。
エンディングのフレーズがカッコいい。
こういうバラッドではウェスのリズムの安定感がずば抜けているところが分かります。 この特徴をちゃんと継承しているのがジョージベンソンあたりかと。ジョージベンソンの場合は、リズムの粘りがあるので、ウェスとも少し違いますが…。
Four on Six
これもウェスのオリジナル曲です。
ベースがルート-5度を弾く、少し不思議な雰囲気のテーマ。
ハーフノートのライブ盤でも演奏してます。かなり盛り上がる曲ですね。
West Coast Blues
ウェスのオリジナル曲です。タイトルに Blues とある通り、ブルース進行でワルツ。
ほのぼのしたテーマですが、ソロはかなり攻めた音使いです。慣れないと今どこを演奏しているのか分からなくなります。 これも勉強になるソロ。
In Your Own Sweet Way
たった2コーラスの演奏ですが、素晴らしい演奏です。
これはオクターブ奏法はほとんどなく、単音のソロだけですね。
Mr. Walker
オシャレな曲ですね。ソロでは、リラックスしているのにテンション高めな音でスリリングになります。
これもコピーすると、いろいろ発見があると思います。 コピー譜がネット上で見つかります。
Gone with the Wind
有名な映画との関係はいまいち分からないスタンダード曲です。
テーマは単音で弾いてます。Polka Dotsと比べるとテーマの印象がちょっと薄いかな。
でもソロは歌いまくりです。このアルバムの中では、一番ゆったりと気持ちよさげに歌っているソロだと思いますね。
全曲をギターでコピーしたいアルバム
というわけで、ジャズギターの教科書としても全曲コピーしても良いくらいなアルバムです。
なんと言っても人柄がにじみ出るフレーズの数々。ウェス自身はとても謙虚な人だったようですが、このアルバムの演奏からは優しそうな人柄が偲ばれます(特にバラッドの演奏から)。
コピーしてちゃんと分析すると、すごく勉強になるアルバムだと思います。(若い頃に分析しておけばよかったと後悔してます…。)
Boss Guitar も良いのですが、ギター+オルガン+ドラムと変則的なので、ウェスを最初に聴くならこの Incredible Jazz Guitar が良いと思います。
とりあえず↓のようなもので始めようかな。
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でも、耳をジャズに慣らすのは必要かも…
と、ここまで書いておいてなんですが、いきなりこれを聴いて、良さが分かるかどうかは保証しません。
ロック・フュージョンしか聴いてなかった頃、初めてに聴いた時は、ウェスのフレーズのアクの強さが強烈で、なかなか馴染めなかった記憶があります。
「アクが強い」というのは、ドミナントの部分でテンション音の使い方、半音上がったように聞こえる(ぼくには)フレーズなどのことです。この辺りを分析して「ウェスっぽさの要素」を解明できると面白そう。
でも、ジャズの音楽に慣れてから聞くと、カッコ良いところが分かるようになります。こういうのって「ジャズの勉強しないとダメ」みたいで、好きじゃないんだけど、ある程度聞き込んで耳(感覚)を慣らすのも必要だったりします。