エレキギターのピックアップの動作原理 (1/2)で、ピックアップのマグネットによって弦が磁化されるモデルを紹介した。
では、どんな風に弦が磁化されるのかを解析していみた。FEMMという有限要素法で磁場解析できるソフトがある(磁場以外も静電場、熱流、電流などがシミュレーションできる)。 これを使ってみた。
種明しをすると、すでにこのソフトで可視化した例がある。Intro to FEMM magnetics modeling with guitar pickups, Part 1がそれだ。
ここでは、ほとんど同じことをやってみた。基本的には磁力線がどのように走るのかを調べる。磁力線は磁石のN極からS極に向かう方向としている。 (たとえば磁界のかたち (名古屋市科学館))
目次
シングル・コイル・ピックアップ1つと弦
まずは一番簡単なシングル・コイル・ピックアップと弦の場合。
FEMMでの領域指定は以下のようにした。
マグネットと弦とAirのみを材料指定する。計算結果は下のようになる。
拡大すると下のようになる。
マグネットの上側をN極と仮定すると、ピックアップの直上はS極に弱く磁化される。 磁力線はマグネットのNから逃げるように走り、最終的にマグネットのS極に戻る。
注意したいのが、FEMMは2次元問題にしているので、弦が無い部分は計算結果に示されていない。 つまり大部分の磁力線はN極からS極へぐるっと戻る。
計算上、長方形の領域を指定している。領域の端では境界条件として磁力線が垂直になるように設定されているため、磁力線が境界条件に合わせて計算されていることにも注意されたい。マグネット遠方での磁力線の振舞いが、計算と実際とは異なるという意味だ。
シングル・コイル・ピックアップ3つ(同相)と弦
シングルコイルが3つの場合はどうだろう。
まずは3つが同相(マグネットの向きが同じ)場合。
拡大すると下のようになる。
ミドルとブリッジのピックアップと考えてみると、磁力線はブリッジ側、あるいはネック側に逃げるようにしてS極にもどる。
シングル・コイル・ピックアップ3つ(ミドルが逆相)と弦
ミドル・ピックアップが逆相(マグネットの向きが逆)の場合
磁力線がピックアップから隣のピックアップへ流れるようになる。
おわりに
磁場を視覚化すると、ぼんやり考えていたことが少しはっきりしてくる。 ピックアップが複数あると磁場の形成は複雑になりそうだ。 音への影響はどうなのかは興味がある。
今回シミュレーションしてみると、ピックアップそのものを含めてピックアップ周辺の状況が音に最も影響しそうだというイメージがより強くなった。 ボディやネックの響きをピックアップがどう拾うかは、結局は弦の響きということになりそうだ。
もちろんボディが響くとピックアップ自身も振動するだろうが、その振動の影響が良いか悪いかは場合によるだろう。