ギュスターヴ・モローの幻想世界──《ガラテア》と《妖精とグリフォン》

幼少期に出会った二つの絵画

子供のころ、家に美術全集的な20~30冊ほどの画集があった。 ボッティチェリやモネ、ダリ、ルノワールのような画家の作品をその頃知ることができた。 なかでも強烈に覚えていたのがギュスターブ・モローの《ガラテア》と《妖精とグリフォン》だった。 当時は画家の名前は覚えておらず、ただこの二つの絵画をペアとして覚えていた。

最近気紛れでゴッホやマティスのアートTシャツを買って、画集を買うようになった。 そう言えばあの絵の作者は誰だったのかと調べてモローだと知り、画集を探した。

再会

何冊か画集を探し求め、ようやく《ガラテア》と《妖精とグリフォン》が収録された一冊を見つけた。それがこの画集。 《ガラテア》のほうが有名らしく、いくつかの画集は《妖精とグリフォン》を収録していない。 私が好きなのは、どちらかと言うと《妖精とグリフォン》のほうなのだが…。

《ガラテア》のポーズは《妖精とグリフォン》とよく似ており、それ以外にも共通点がある:

  • 洞窟のような空間で守られる女性像
  • 半身をひねった優美なポーズ
  • どこか「手の届かない存在」としての雰囲気

幼い自分が両者を無意識に結び付けていたのはあながち間違いではなかった。

モローの女性像の特徴

モローはポーズが似かよった絵が多い。ポーズが似ていても細部が異なるので、美しいポーズを選んでいるのだと思われる。 精緻でありながら色彩が鮮かで、女性が特に美しい。この画集の副題にある通りで幻想的でもある。独特な世界を強く感じさせる画家だと思う。

調べてみるとモローの女性像は共通するポーズがある:

  • 半身をひねった姿勢:正面性を避け、身体をひねることで優美さと動的なリズムを強調する。
  • 片腕を上げる、または緩やかに垂らす:柔らかい腕の線が曲線的な構図を生み、観者の視線を導く。
  • 首の傾きや遠くを見つめる視線:現実から切り離された夢幻性や神秘性を強調する。

《妖精とグリフォン》

下の写真ではグリフォンは写っていない。実際の絵では女性の足の横あたりに描かれている。

妖精の肌の白さと背景の闇のコントラストが際立ち幻想的である。妖精の表情もどこか微笑んでいるようにも見える。

《ガラテア》

《ガラテア》はこちらはギリシア神話をモチーフにしており、巨人ポリュペモスがニンフであるガラテア覗き見る場面である。 ガラテアにポリュペモスが一方的に求愛する物語であるが、ガラテアの周囲が囲われており、巨人には手が届かない存在であるように見える。

おわりに

画集で見ると、子供のころは気付かなかった精緻さ、鮮かな色彩、明暗のコントラスト、幻想的な構図とテーマに引き込まれる。 現代のファンタジックなイラストにも通じるものがあるのではないか。