「ジャズ批評」で連載されていたという、エッセイ風なマンガ。 かなり前に何かで読んだことがあったので、懐しさもあって読んでみた。
熱い思いなのか、は置いておいて歴史的な価値はあると思う。
レコードからCDへの移行期の悲哀も含めて、1980年代から90年代くらいまでのマニアックなジャズ・ファンの生態はカバーしていると思われる。
ジャズ喫茶での「お作法」などは自分も聞いたことがあるが、学生の当時はジャズ喫茶など怖くて入れなかったので実際はよく知らない。 ただ当時でもかなり「面倒臭い連中」の音楽だったことは確か。その雰囲気はよく伝わる。 オーネット・コールマン死去でも買いたが、「SONG Xを聴け!」みたいな乱暴なことを平気で言ってくる連中はこういう人達なんだよな。
マニアックというか偏屈というか、理解できない「こだわり」が強くまじめに読むにはかなりツラい。 著者は自分より一回り上の世代なので、分かる部分と分からない部分はあるのだが、ほとんどは「ついていけねー」感じ。 でも、これが自分の周りにいたジャズ・ファンの生態の一例であることは確かだ。 多くのジャズ・ファンは、もっと常識的だがジャズに対する思い入れという点では弱いのかも知れない。
前半はディスク・レビューもあるが、後半はディスク・レビューはない。連載中に変化があったのかも知れない。 しかも全然褒めてないレビューもあるので購買意欲は湧かなかったりするし、褒めているレビューもなんだか買いづらい気はする。
そうこうしているうちにジャズ喫茶もどんどん減っていったらしい。 まあ、そんな敷居が高そうな商売は新規の客が少なすぎて、よほど客単価が高くなければ継続しない。 「なんかシャレオツ(死語)な音楽にあこがれる」「ジャズを勉強したい」みたいな意識だけでは、ジャズ喫茶にたむろする面倒なオッサンの御託を我慢はできないからなあ。
結局この手のやたらこだわりが強い人達が新規参入者を拒むかたちになっていたように思える(個人の感想です)。 その結果、最近は女性のジャズ・ミュージシャンにポーズをとらせたり水着を着せたりと集客には苦心しているのがジャズ業界だ。
そういえば90年代初めまではライブ・アンダー・ザ・スカイなどジャズの野外コンサートも割とあった。音量もそれほど大きくなく、おおらかに音楽を楽しむ感じがあった。 ジャズ・フェスでジャズ以外も演っていたりしたからコアなジャズ・ファン以外にも門戸は開かれていたように思える。