帯にも書いてある通り、自分にとっての幸福・成功の尺度を自分の中に持つことが書かれています。 会社や組織の都合、論理できまる幸せ、例えば昇格、給料、名誉などが本当に自分の価値観と合っているのかを考え直すきっかけにすると良いと思います。 中にはそういうものがピタリとハマる人もいるとは思うけど、そうでない人は不向きなゲームをやらされていることになる。
本書で指摘されていて耳が痛いのは、自分の幸福の尺度が分からなくなっている人が多いのではないか、というもの。 課長になり、部長になり、その上になる、という会社人生をぼんやり描いている人は少なくないと思われます。日本だと会社や組織の尺度で人を判断し、それが暗黙的に受容されている。でも実際は、今どきは課長クラスでさえ全員はなれません。部長や社長なんて、さらに狭き門になる。そんな尺度ではほとんどの人は幸せになれないことになる。このように現実と会社人生イメージのアンマッチを認識していないと、会社人生は負けゲームでしかないよ、と。
では、どうするか。
会社や組織の尺度ではないところに、自分の幸福を探しなさい、と。自分が幸せを感じるのは何か、それは人の上に立つことなのか、自分の能力を活かすことなのか、誰かの役に立つことなのか、そういうことを考えて働くことが大事でしょ、ということが最後の章で書いてあります。
「自分の幸せの尺度を持つ」意味を噛みしめる。このことは教えてくれないし、議論もあまりされていません。だから我々は自分で考えて答えを出さなければならない。これは「あなたは、今の仕事をするためだけに生まれてきたのですか」での中身にも通じる点ですね。
会社に行って「毎日なんだかつまらない」とか「プレッシャー」を感じるなら、その根源が組織の尺度かどうかを調べるのが良い。自分が幸せを感じる仕事は何かを今一度振り返って、「これが好き」と思える部分を探す。その積み重ねで仕事のやり方が変わっていくのではないか、とぼんやり考えました。
「趣味に生きる」という生き方もありますが、筆者は批判的です。中途半端な趣味に生きても、満足が得られない場合がある。 それよりは、長い時間スキルや経験を積んだ領域(つまりビジネスの領域)で、幸福を探す方が成功する確率は高いのではないですか、と。
前半は、不祥事を起こす企業の体質やJALの再生時のエピソードなど、読み物としては面白いし読みやすい。 でも、この本の主題にはなくても良い感じはするし、後半だけ読んでも大事な部分は充分通じます。
題名は煽りもありますが、中身の主張や提案は至極真っ当なものばかりで「そうだよな」と思うことが並んでいます。 読んでいて「そうだよな、でも、だけどね」と考えてしまうなら、会社や組織の尺度に染まっているのかも知れないですよ。