オネスティが大好きな人は読んじゃだめ。読むと少し寂しいビリー・ジョエルの伝記。
ビリー・ジョエルの人となりが分かるものとしては、LPのアルバム「ナイロン・カーテン」に同封されていた立派なブックレットがあります。でも、所詮はおまけ。
このビリー・ジョエル素顔の、ストレンジャーはより赤裸々な素顔が分かります。
目次
ぼくの中学校時代のアイドルだったのに…
中学校の頃のアイドルはビリー・ジョエルでした。
きっかけはシングルカットされた「プレッシャー」(ナイロン・カーテン)がピンと来たのかな。洋楽を聴き始めたころに好きになったミュージシャンで、ギターを弾き始めるまではぼくにとっては大きな存在。
ストリートライフ・セレナーデ 以外のスタジオ・アルバムは全て持っていました。(ウソでした。ザ・ブリッジも持ってなかった…。)
アルタイムで追いかけていたのは、アルバムで言うとStorm Frontまで。とはいってもRiver of Dreamsはだいぶ後にリリースされて、これもリアルタイムで聞いた(はず)。
読んでビリー・ジョエルが好きになるかと言うと、ビミョー
この本を読んでいっそう好きになるかというと、かなりビミョーですね。アマゾンのレビューでも「暴露本」と書かれたものがあって、そう思うのも無理はない。
それでも、祖父母や両親についての記述は、彼を理解するうえでは役に立ちそう。
親との関係に悩む人は多いとは思うけど、彼も家を出た父親との関係が生涯にわたって尾を引いている、というのは意外です。すこし共感というか同情はできます。父親に捨てられた思いが、彼のキャラクターに暗い影を落としている。そういう指摘は元バンドメンバーからもあります。
本人はあまり意識していないみたいだけど、どうやら人との関係を作る・維持するのがかなり苦手そう。 元バンドメンバーとの関係からも、そんな印象を受けますな。
苦楽を共にしたはずのバンドメンバーをあっさり切り捨てる!
イノセント・マン後にそれまでのバック・バンドのメンバーをあっさり切り捨てているのが、まずイメージダウンしちゃう。
この辺りはEストリートバンドと活動を続けているブルース・スプリングスティーンとは対照的です。
元バンドメンバー3人のインタビューは生々しい。とくにドラマーのリバティー・デビートの話しが多め。リバティー・デビートとラッセル・ジェーバース(リズムギター担当)については、ストーム・フロント以降はビリーと関係がかなり悪化しているので、彼らの話しは読むとがっかりしますよ。その辺りは差っ引いて読むのが良いかも。
実際にはアルバム「ストレンジャー」あたりから、お金の面でバンドメンバーとギクシャクしていた模様。バンドメンバーだけで作ったソングス・イン・ジ・アティックの写真では和気あいあいとした様子でしたが…。でもバンドメンバーにとっては面白くない関係だったようです。
元ファンとしては、少し寂しい…かな
ビリー・ジョエルの人柄については、正直あまり感動がないです。というのも、エピソードがスーパースター然としたものが多いせい。酒と女にだらしない感じしかしない。そういう面を見てしまうと、オネスティみたいな曲で感動はできなくなります。感動を返してくれよ。
なんというか、あまり誠実な人に思えないんですよ。弁が立つというか、理由付けや言い訳が上手いというか、どうにも胡散臭さを感じてしまうのは、ぼくが汚れた大人になったせいなのか。
少なくとも、中学生の頃のぼくに影響を与えた人であることは間違いない。でも音楽面以外はあんまり尊敬できないなー、というのは少し寂しいですね。
音楽的な解説は楽しめる
各アルバムの曲の解説は楽しめるかな。背景を知っていると、曲の聴き方が変わりますからね。
ただ、ザ・ブリッジ以降は、それ以前とは思い入れが違ってしまうのは仕方ないかな、と思う。
必死にもがいたストレンジャー、その勢いを維持したままジャズ・テイストに挑戦した52ndストリート、ロックンロール・アルバムを狙ったグラスハウス、ちょっとシリアス路線を狙ったナイロン・カーテン、オールディーズへのオマージュ的なイノセント・マンという風に、それぞれのアルバムにテーマがあるのが特徴的でした。
それに対して、ザ・ブリッジ以降は音楽的なテーマ性が特に感じられない。良い曲はあると思うけど、アルバムとしての印象が薄い。ミュージシャンとしての旬を過ぎたのかなー、と。
もしも(ベスト盤ではなく)ビリー・ジョエルのアルバムを聴くなら、脂の乗った時期ストレンジャーからイノセント・マンまでがおススメです。
(2019-09-02にリライト。)