これは早く読んでおけばよかった。 アート系のお話で、芸術家の感覚を明確に言語化してくれるのはとてもありがたい。 こういう本を読めば、自分で絵を描くときや写真を撮るときの注意点がおのずと分かってくるというものです。
個人的には「なんとなく見ていた」絵画の見かたを易しくレクチャーしてくれる本でした。 こういうレクチャーは図工の時間に教えるべきでしょうね。
ざっくり以下のポイントを名画を題材にして説明しています:
- フォーカル・ポイント
- 視線の経路
- 絵画のバランス
- 色と絵の具と「色の価値」
- 構図
- 統一感
視線の経路に関する章は、「知らなかった!」ということばかりで、とても新鮮です。 画家が「こう見て欲しい」という意図を汲み取るのも楽しそう。ある意味、これは画家と対話が出来るというわけです。
バランスの章では、意外と数学的・幾何学的な観点が大事で、「なんとなく美しい」ではなく法則や理屈があるのが納得です。 「美人には基準があるが、かわいいには基準がない」というのはガリレオ(湯川学)先生だったか。 キャンバスの縦横比も数学的な裏付けがある。 画家自身が数学をどれくらい意識していたかは分かりません。感覚的・直感的に「この比率が良い」ということはありそう です。
絵の具の章は、調合や色の名前の由来などとても興味深い。 古い時代の画家は、絵の具などの調合のスキルも必要だったとうことで、テクニカルな面も持ち合わせていたのが面白い。
この本の内容をすぐにマスターするのは難しそうですが、絵を見ながら少しずつでも身に付けていきたいと強く感じました。
前職では4ヶ月に1度くらい出張があったので、その度に美術館に行ったりしていました(最近は行けてない)。 なんとなく見るのも良いですが、「こういう風に見るのが良い」と知っているのでは違う見方ができます。
あと「名画」と言われているものは実物を見るのが断然におすすめです。 印刷やモニター越しでは筆使いや絵の具の流れがどうしても分かりづらい。 なによりも印刷やモニターでは絵の佇まいを直接感じることができない。 実物の絵には、絵が持つ迫力を感じることが出来ます。