禁酒セラピー / アレン・カー

この本は「読むだけで絶対やめられる」とあって、面白そうなので読んでみました。 ちなみに、ぼく自身はお酒を飲まなくなって15年くらい経ちます。 それ以来飲みたいと思うことは一度もないです。いまのところ。

この本がユニークなのは、精神論でお酒はやめれない、洗脳・思い込みを解くことでお酒をやめることができる、という点です。 言い換えると、お酒にメリットがないことを理解することで、お酒をやめられる。

お酒を飲むうえでの言い訳(洗脳・思い込み)

洗脳・思い込みというのは次のようなことです:

  • 舌が肥えたらお酒がおいしくなる
  • お酒を飲むと勇気がでる
  • お酒を飲むと外交的になる
  • お酒を飲むと精神的に安定する
  • 社交のためにお酒を飲む
  • お酒を飲むと楽しくなる

上記はこの社会では「常識」となっていますよね。でも、それって本当なの?と著者は問いかけます。

たとえば「舌が肥えたらお酒がおいしくなる」というのは、お酒を覚えたてのころの話から始まります。 最初は誰もが甘めのお酒からトライしたり、気持ち悪くなったりしたのに、強いお酒や苦いお酒を飲めるのがどこかカッコいいという価値観に染まっているのが我々です。 そういった価値観・思い込みが他にたくさんありますよ、という事例がこれでもか、と出てきます。 それくらい、この世の中はお酒を飲む世の中なのです。

アルコールは食虫植物、われわれは食虫植物の中に入り込んだハエ

  • 著者はアルコールは食虫植物、われわれを食虫植物の中に入って捕らえられたハエに喩えます。 甘い香りと蜜に惑わされて、自分が溶かされていくことを理解できていないというわけです。
  • アルコールも同じです。アルコールは渇きを癒やすことはなく、アルコールを摂取するとさらに欲しくなる毒物だと断じます。
  • 毒物を摂取するための言い訳を探しているのが、この世界

    この世の中では、お酒を飲むための言い訳が、なかば常識として我々に刷り込まれています。それが上のリストなのです。 「少量のお酒は健康に良い」なんていうのは、お酒が有害であることを認めているからこそ出てくるフレーズです(本文175ページ)。

    そうすると、我々がお酒を飲むというよりは、お酒が我々に飲むように仕向けていることが分かります。お酒というのはそういうものです。 つまり依存する薬物と同じものです。

    この呪縛から逃れないと、本当の意味でお酒をやめられません。逆に言えば、お酒の本当の姿を看破できれば、簡単にやめることができるというのがこの本の主張です。

    すでにお酒をやめているぼくが読んでみて

    ぼく自身は15年以上お酒をのまずにいても、この本を読んでとても良かったと思っています。

    この本と似たようなことからお酒をやめたのですが、ここまで理路整然とはなっていなかった。 あと、これを読めば飲酒にもどることもないと言えます。

    ぼくの場合、父親は毎日晩酌し、土日は昼から飲みはじめる完全な依存症でした。もちろん本人も周囲も「依存症」とは思っていませんでしたが…。

    たまに「休肝日」などと称して休んだり(どれだけ肝臓を痛めているのか)、「健康のため」と称して「にんにく酒」や「梅酒(砂糖なし)」を自作して飲んでいたものです(お酒をやめれば良いのにと子供心に思ったものです)。

    子どものころは夕食で酔ってニュースや新聞に急に怒り出したり(結構あったと記憶している)、酔った勢いで体罰をされたり(これは回数は多くなかった)、かなり困った部類だと思いますね。

    ぼくが成人してからは、電話しても夕方は呂律が怪しく、言っていることも信用できないので、朝方にかけないと真面目な要件が話せないような人でした。 帰省しても昼食はたいていビールを飲み、亡くなる少し前まではご飯を食べているお店で機嫌が悪くならないかヒヤヒヤしたものです。

    そういう悪い例をずっと身近で見ていたので、ぼくの場合はお酒をやめるのは割と簡単でした。 なのですが、困ったことに、こういう依存者のことも割と簡単に忘れてしまう気がします。

    この本は、そうした依存者の言い訳や思考を冷徹に整理して、どこに問題・原因があるのかとても分かりやすく説明しています。 身近な破滅者のことを思い出して、アルコールの有害さを再認識できたことも良かった。

    おわりに

    ぜひ多くの人に触れてほしい本です。

    お酒はなくても人生は楽しく過ごせますし、お金もかからず、そして飲んだ後にグダグタする時間もなくなって、良いことしかありません。

    実際、お酒をやめるほうが幸せになれます。 今まで健康面、習慣面などで「自分はヤバいかも」と思って「少しお酒を控えよう」なんて考えたことがある人にはおすすめです。マジで。