元パナソニックの人が書いたリチウムイオン電池の解説書である。
2020年初版ということで、リチウムイオン電池の本としては比較的新しい。 リチウムイオン電池の扱い方、設計の考え方、製造工程、品質管理、そしてBeyond リチウムイオン電池までカバーする。 ある意味かなり欲張りな内容と言える。 これを200ページ強でまとめているので、それぞれの話題はそれほど深くはないが、ほどよくまとめていると思った。
電気化学的な解説や材料系の話題は多くない。 そういう点では、電気化学に苦手意識を持っている人には取っつきやすいかも知れない。
章立ては以下の通り:第1章 リチウムイオン電池の信頼性 第2章 リチウムイオン電池の安全性 第3章 リチウムイオン電池の急速充電/大電流用途 第4章 電池の製造工程と品質管理 第5章 リチウムイオン電池の進化型と革新電池 Appendix 1 電池に関する用語解説 Appendix 2 電池に関する正負極材料の略号と特徴
第1章で劣化についての記述がある。第2章では安全性について述べている。 第4章では工程のマニアックな話題がある。また分析やデータ解析についても相当にマニアックな話題(dV/dQ, dQ/dVなど)がある。 知っている人には物足りないかも知れないが浅く知っておくだけなら役立つと思う。自分は楽しく読めた。
全体的に見ると、リチウムイオン電池の実際的な取り扱いの知識を得るには良い本だと思う。 使う側の基礎知識として十分な範囲をカバーしていると思われる。
本のタイトルに「充放電技術」とあるが、そもそもそんな「技術」はないので、このようなタイトルをつけた意図がはかりかねる。 上の目次でも、該当しそうな章はなさそうだ。
ちなみに電気化学的・等価回路などのモデリングの話題はない。