映画「バカ塗りの娘」を観てきた。
上映館が限られていて、ミニシアター系での上映が主らしい。 名古屋地区だと少し離れた場所のイオンで上映されているが、それ以外だと伏見の昔ながらの映画館くらい。
「馬鹿塗」については津軽塗の小林漆器から引用しておく:
津軽塗は三百余年の歴史を有する堅牢優美な漆器で、その創始は寛文年間の頃津軽藩において、産業開発のために興されたものと云われております。
漆液の塗り・研ぎ・磨きは38~48回にも及び、俗に『馬鹿塗』とも称されるほど膨大な手間と時間を惜しみなく注ぎ込まれるため、一作品の完成まで実に3~6か月を要します。
津軽を代表する伝統工芸品として、また、日々を彩る実用品として、地域を超えて、多くの人に愛され続けています。
この映画は津軽塗の「バカ」丁寧な仕事から生まれる魅力と、その仕事に魅かれる娘を描きたかったんだなと感じた。 細かいことはツっこむだけ野暮だろう。
津軽塗の工程がかなりの時間写されている。作業の音も大きく録られているので、作業の雰囲気が伝わってくる。 作業の音だけが聞こえるこの父娘の時間の流れを感じることができる。そしてこの父親と祖父の時間も。 この監督のこだわりを感じてあげるべきところだろう。
とにかく主演の堀田真由が良い。フードコートらしいところでの母親との会話のシーンは、母娘のギクシャク感、子供時代にあったであろう一方的な母親の態度への辟易感と反発とが入り交じった雰囲気など、好きな場面だった。
伝導的な技術にありがちな後継者不足とか、採算の難しさなどは当たり前に描かれているし、安易に答を出そうとしているわけでもない。 後継者についてはとりあえず「もう少し続ける」までは描かれている。 採算の難しさは、希望はあるかもと思わせてはいるが、結局解決するような感じもしない。 難しい道を選んだヒロインが淡々と生きるような将来を予感させて終わる。 都合よく描いていないのは好感が持てる。
津軽塗の作業がとことん地味であるのと同様に、ヒロインの描き方も地味であり、映画全体的にかなり抑制的で地味ではある。 そこが良いのだが、大きい映画館での上映は難しそうだ。たまにはこういう映画も良い。