「絶望読書」頭木弘樹著

絶望を感じてしまう人におすすめです。落ち込んで、そこから這い上がる時に助けになるのが読書であると、著者は言います。ただ、今絶望を感じている人が、この本を受け付けるかは、よく分かりませんね。今後絶望を感じる時の対処法として、読んでおくのが良いのかも知れません。

入院している人にはドストエフスキーが人気というのが興味深いです(笑)。人が入院すると、友人知人が気を利かせたつもりでやたらポジティブな本やら闘病記やらを贈られて、それがかえって落ち込んでしまう、という笑えないエピソードも。落ち込んでいるときにポジティブな言葉を受け付けられないことは、私自身も何度も感じていたことで、この本の主張は腑に落ちました。

落ち込む時は、どっぷり落ち込んでから回復するのが一般的で、どっぷり落ち込んでいる時期にポジティブ系な刺激は拒絶反応が起こると書いてあります。このどっぷり落ち込んでいる期間が大事で、この時にしっかり落ち込む時に回復への力が養われるように思えます。しっかり落ち込む期間を充実(?)させる上で絶望読書が役立つというわけです。しっかり落ち込まないと、しっかり回復できないのは、私自身の経験からも納得します。

何に苦悩するかは人それぞれです。悩みの種は何であれ、苦悩すること自体は恥じることではないと思います。苦悩した末に自分なりに出した結論は、その後の人生のどこかできっと活きてくると思います。しっかり苦悩することが、同じ苦悩を繰り返さないために大事だと私は思っています。

この本は絶望読書のガイドとなるリストがあるので、この夏の読書にお薦めです(笑)。初めて知りましたが、金子みすゞの詩は衝撃的でした!

山本直純の「音楽で鬱が吹っとぶ本―こんな名曲が気分を変える」にも似たようなことが書いてありました。「落ち込んでいる時はカタルシスが必要」云々。 山本直純が音楽で薦めていたのはブラームスでした。私もブラームスが大好きです。