エレキギターのトーン回路のシミュレーションをやってみました。
ネットを検索すると、ちらほら見付かるので新しいことはないです。
今回はとりあえずLTspiceを使いました。
ピックアップのインダクタンスなどはPickup Inductanceを参考にしました。
目次
シングルコイル・ピックアップの場合
一般的にシングルコイルではポットの抵抗値は250kΩ、キャパシターは0.047 uFを使います。これを基本にシミュレーションをしています。
SPICEモデルは以下のようなものです。どこかで見た回路でケーブルのインピーダンスも考慮していたものがあったので真似をしています。
トーンのポットを変化させた場合
トーンの値は抵抗値としています。通常のギターであれば「トーンを全開」はポットの抵抗値いっぱいにしている状態です。 つまりキャパシターに信号が最も流れないようにしている状態です。
トーンのポットを0にしてしまうと、低い周波数にピークが現れます。 これはピックアップのインダクターとトーン回路のキャパシターで共振回路が形成されているためと考えられます。
この場合
\[ f_\mathrm{R} = \cfrac{1}{2\pi \sqrt{LC}} = 464\:\: [\mathrm{Hz}] \]となりますから、だいたい合っているようです。
シングルコイルに500kΩのポット、0.022uFのキャパシターを使った場合
SSHなどのレイアウトではシングルコイルとハムバッカーが混在します。
この場合に1V1Tの回路とするとポットの抵抗値やキャパシター値でシングル向けにするか、ハムバッカー向けにするかで音が変わります。 ここではシングルコイルピックアップをハムバッカー向けのサーキットに入れた場合はどうなるかをシミュレーションしてみました。
青いラインが通常のシングル向けのポット抵抗値とキャパシター値の場合です。
これを(ハムバッカー向けの標準的な)500kΩと0.022uFにするとトーン全開では赤いラインとなります。かなりピークが大きいです。
トーンを200kΩで、ほぼ青のラインに近付きます。 トーンポットの抵抗値を半分くらいで、シングル向けのサーキットでトーン全開に近くなるということです。
ちなみにポットのカーブがオーディオ用だとリニアとは違います。ツマミの半分より手前で抵抗値は半分になると思います。
ボリュームを絞った時のトーンへの影響
Daisuke Kunitaさんが動画でストラトのリアピックアップでも太い音を出すためにはトーン回路を効かせるのと、ボリュームを少し絞ることを挙げています。
Daisuke Kunitaさんが言っていることが、どういうことなのかをシミュレーションしてみました。
上記のSPICEモデルではギターのボリュームを二つの抵抗器で表現しています。
グラフ中のボリュームの抵抗値は上側の抵抗器の値を意味しています。 たとえば0Ωがボリューム全開、250kΩはボリュームゼロということです。
シミュレーション結果を見ると、ボリュームを絞ると徐々にピークが下ってきています。 もちろん全体の信号の振幅も小さくなります。
ピークの変化は、トーンで絞るよりもボリュームを絞るほうがマイルドだと言えそうです。
ということで、トーンで大雑把に高域をカットし、ボリュームでさらに若干下げるというイメージでしょうか。 あと、ボリュームを上げれば高域が若干上がってメリハリが効くという効果も期待できそうです。
ハムバッキング・ピックアップの場合
ハムバッキングの場合も同様にシミュレーションしてみました。
ピークの位置などは若干違いますが、傾向としてはシングルコイルの場合と同様です。