スーザン・ケイン著「内向型人間のすごい力」を読みました。
ラノベの「やはりおれの青春ラブコメはまちがっている。」では「ぼっち最強」(とは言ってないか…)ですが、その裏付け理論があった!
…てのは冗談ですが、何をするにしても、一人ぼっちになりがちな性格は確実に存在して、そういう人々に関するリサーチ結果を現時点でまとめています。 タイトルは釣りもあると思います。 私は文庫で読みましたが、もともとの単行刊では「内向型人間の時代 – 社会を変える静かな人の力」で、内向型らしくもっと穏やかなタイトルでした(笑)。
自分が内向型かどうかの目安として次のような質問があります(下記は帯から転記したもので、本文ではもう少し項目が多い):
- グループよりも一対一の会話を好む。
- 文章のほうが自分を表現しやすい。
- ひとりでいる時間を楽しめる。
- 周りの人にくらべて、他人の財産や名声や地位にそれほど興味がないようだ。
- 聞き上手だと言われる。
- 大きなリスクを冒さない。
- 邪魔されずに「没頭できる」仕事が好きだ。
- 誕生日はごく親しい友人一人か二人、または家族だけで祝いたい。
- 他人と衝突するのは嫌いだ。
- 考えてから話す傾向がある。
- 外出して活動したあとは、それが楽しい体験であったとしても、消耗したと感じる。
- 忙しすぎる週末より、なにもすることがない週末を選ぶ。
- 一度に複数のことをするのは楽しめない。
私は上記が全部当てはまるので、「内向型である可能性が極めて高い」し、自分でも絵に描いたような内向型だと認識しています。 具体的にどういう人が内向型かというと(つまり私は)、「宴会は疲れる(外国でのパーティー恐怖症)」「宴会よりは本を読んだりする方が好き」「スピーチ恐怖症」「あがり症」「激しい言葉に過敏に反応(フリーズしてしまう)」「発言が少ない(無口)」で、ポジティブな面としては「数多くの友人よりは、ごく一部の人と親密な関係を築くことを好む」「無駄話が好きじゃない」「周りをよく観察してから行動する」「一人で黙って粘り強く取り組む」等の傾向が強い人逹のこと。別名は「とても敏感な人々(highly sensitive people)」。
「内向型」と「外向型」という用語については賛否があるのは筆者も承知していて、用語については最後に立場を説明しています。
「内向型」に関する本は日本人が書いた本は何冊か読んだことがありますが、それらとこの著書の違いは以下のような点にまとめられます。 私が読んだ日本人の本は「自分は内向型だが、こうやってきた」というものだけでした。 一方で、スーザン・ケインは内向型らしく緻密に調査し、種々の学説に加えて、自らもセミナーを受け、インタビューをして、慎重に言葉を選びながら各章の結論を明確に示しています。言い換えると、日本人の著書は隨筆風であるのに対して、本書はどちらかと言えば論文に近い印象です。
私たちは、無意識に「外向型」が理想的という文化にすっかり染まっているので、内向的な傾向を隠したり、恥ずかしく思ったり、矯正しようとする。けれど、それは間違っていることをこの本は示しています。もっと早く読みたかったですね。
現代は「性格の時代」で、その前は「人格の時代」という。 「性格の時代」とは「他人にどう思われるかが重視される」こと、対する「人格の時代」とは、道徳的で高潔な生き方が尊ばれることを意味している。 「人格の時代」に変化したのはデール・カーネギーによる一連の著書(「人を動かす」とかね)が世に出る時期と重なる。 (ちなみ、ここでいう「人格の時代」から「性格の時代」への変遷は「七つの習慣」でも、同じようなことが書かれています。 コビィは「人格主義」から「個人主義」になっていると指摘しています。ちなみに「七つの習慣」では「人格主義」への回帰が説かれています。)
こういう本がアメリカ人によって書かれていることが興味深いのですが、実際にはアメリカ人の半数から1/3は内向型と言われていて、「一般的な理想形」とのギャップに悩む人は多いらしい。 アメリカでは、一般的にアジア系アメリカ人の方が内向型が多く、それは文化的な背景があると推測しています。 それによれば、日本人も内向型は相当数いると思いますが、日本人による内向型に関する考察の状況にも興味がありますね。
私にとって興味深い話題としては、カリスマ的リーダーシップの神話、オープンオフィス(いわゆる大部屋)の弊害、ブレインストーミング神話の崩壊、体質(セロトニン・トランスポーターの型)に関すること、などですね。 特にリーダーシップ論は組織に属する人は読むべきだと思います。 世の中の常識が当てにならず、内向型が優れたリーダーシップを発揮する状況は少なくないことが示されています。
「人は最適なレベルの刺激を求めている」というフレーズが腑に落ちました。 これは、その人の刺激に対する応答によって「高反応」型と「低反応」型に分類されることから導かれる結論です。 「高反応」な人は内向型の傾向が強く、「低反応」な人は「外向型」の傾向が強い。 元来私は非常に疲れやすくて、悩みの種でしたが、仕事のオフィス環境や、対人関係が重要な案件での緊張が、過度な刺激として入ってきて疲れやすいわけですね。
内向型を自認する人にとっては、自分のことを本当に理解できて、涙が出てきそうになるかも知れません。 「そうそう、あるある」の連続で、この年齢でようやく自己肯定する土台をもらった気分です。
自身が内向型でなくても、パートナー、子ども、部下が内向型の場合の接し方についても体系的な理解が得られて、外向型の人にもおすすめです。もっと多くの人に読んでもらいたいと切に思います。 外向型と内向型が互いを理解してうまく調和することで、世界はもっと生きやすく創造的になると確信すると思います。