「よく眠るための科学が教える10の秘密」ワイズマン著: ユーモアたっぷりだけどデータに基づいた科学的な本

「よく眠るための科学が教える10の秘密」/ワイズマン著はユーモアたっぷりだけど、可能な限りデータに基づいた客観的で真面目な内容。寝相と睡眠の関係とか、睡眠学習、夢、など興味深い話題がほぼ網羅されている。未だに睡眠はすべてが解明されているわけではないけど、それでもだいぶ分かってきている。そんな睡眠の研究結果を分かりやすい語り口で述べられている。

レム睡眠・ノンレム睡眠、睡眠の深さのリズムなど基本的な知識は覚えておくと、自分の睡眠をマネージするうえで役立つと思う。

睡眠不足の弊害は、僕たちの認識よりはずっと深刻だと受け止める方が良さそう。 特に1-2時間程度の睡眠不足が脳の機能に大きなインパクトを与えるのは意識するべき。 GIGAZINEでも似たような記事がある(6時間睡眠を続けている人は自分で気づかないうちに徹夜した人並みに認識能力が落ちている )。

日本人の場合、統計的に世界中でも睡眠時間が短いことが知られている。少しの睡眠不足で脳の機能が低下することが分かっているから、もしかすると、その弊害は色々なところに現れているのかも知れない。それが睡眠不足の蓄積が一因とは認識されていないままで。

知り合いに「眠る時間がもったいない」という人がいるけど、そのような考え方はとんでもない間違いだな。 起きている時間を充実させるためには、睡眠がとても重要で、睡眠を減らして人生を楽しめることはあり得ない、と思った。

以下はメモ:

睡眠不足の弊害

事故につながりやすい: 1-2時間の睡眠不足が事故につながる
  • スリーマイル島原子力発電所事故
  • スペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故
  • チェルノブィリ原子力発電所のメルトダウン
  • 居眠り運転は18-25歳の死亡事故の第一位(アメリカ)
睡眠不足によって脳の活動が不活発になる

アメリカ・ワシントン州立大学睡眠・行動研究センターの実験

  1. 実験参加者に最初の数日は8時間睡眠
  2. その後4つの睡眠時間のグループに分けた: 9時間・7時間・5時間・3時間
  3. 数日後PCを使った反応テスト(画面で点が見えたらボタ ンを押す)
  4. 「7時間」のグループの注意力が大幅に低下・テスト結果も低調! 「自分たちは9時間と同様に頭が冴えている」と自覚睡眠不足の弊害

自制心・道徳心が低下する
  • プロとは言えない行為をする(看護師の例)
  • 意図的にのろのろ仕事をした
  • 秘密情報を外部に漏らした
  • 病棟内で違法薬物を使用した
人を騙す
  • 学生逹に一週間の睡眠時間を記録してもらい、クイズを実施。睡眠時間が短い学生ほど、正解数を誤魔化した!
  • 睡眠不足の社員は仕事中にネットサーフィンする傾向が強い
身体と心の健康を損なう
  • 肥満: 食欲を増進するホルモンが分泌される

    睡眠を制限するとジャンクフードを買う割合が増える実験結果も

  • 肌荒
    • コラーゲン分泌を抑制する「ストレスホルモン」が分泌される
    • 1晩寝ないだけで、すぐに現れる
  • 心の健康を損なう: うつ病
  • 統合失調症
  • 子どもの注意欠陥・多動性障害
脳への影響: 記憶力・言語能力・論理的思考力が低下
  • 睡眠不足が5年以上続くと、論理的思考能力と言語能力がとりわけ低下する
  • 一晩の睡眠時間が6時間以下・8時間以上の人の脳は7歳老化する睡眠の深さ

レム睡眠・ノンレム睡眠

レム←→ノンレム睡眠サイクル(平均5回)

レム睡眠: 急速眼球運動(レム: rapid eye movement)
  • 脳幹がすべての肉体的運動をブロックする→夢を見る
  • 一晩の1/4の間はレム状態を繰り返し体験する
  • 脳は覚醒時とほとんど同じように活動する
レム睡眠の効用
  • 記憶力を高める
  • トラウマ的な出来事に対処する力となる
  • 問題について新たな視点で見つめ直す助けになる
ノンレム睡眠
  • 睡眠の第一段階〜第四段階を「ノンレム睡眠」と呼ぶ(レム(rapid eye movement)が無いから)
  • 外界からほぼ完全に切り離される

    目を覚まさせることが非常に難しい
    起こしたとしても、当人はしばらくぼんやり上の空

  • 精神的・肉体的な幸福に不可欠
  • 成長ホルモンの分泌と関係
  • ノンレム睡眠がないと、目覚めた時に疲労感・焦燥感が 残る

熟睡のためのノウハウ

  1. 自分用の居心地の良い寝床
  2. 昼間の過ごし方
  3. 寝床に入る前の時間の使い方
  4. 眠りに落ちる方法
  5. 夜中に目が覚めた時の対処法
自分用の居心地の良い寝床
  • 暗闇を確保する (光はメラトニンの流出を減らしてしまう)
  • 騒音にはホワイトノイズで対抗(FMラジオのノイズが有効)
  • 寝室の温度は18°Cくらい
  • 気持ちを安心・安全状態にする → 不安を軽くする処置(鍵・アラームなど)
  • 寝室を眠るためだけの部屋にする
昼間の過ごし方
  • 昼寝は短く: 正午あたり20分間だけ
  • 日中に身体を動かす: 昼間のエクササイズが有効
  • 頭を疲れさせる: 家にこもっていないで、店をのぞく、観光をする、行ったことがない美術館・ギャラリーを訪ねるなど
  • 寝床に入る時間を調整する: 睡眠効率(眠った時間/寝床にいた時間)を0.9になるように
寝床に入る前の時間の使い方
  • ゆっくり風呂に浸かる: 眠る直前の入浴が睡眠の質を向上
  • 眠る前に心配事をメモする
  • 眠る前のスナック: 炭水化物: ビスケット・トースト・マフィン・バナナなど
  • ラベンダーの香り: 効果が証明されているラベンターの香水/オイルを使おう
眠りに落ちる方法
  • 羊を数える
  • 楽しいことを考える (ただし、過激な想像や興奮することは避ける)
  • おまじないのあくび あくびの真似をする: もう寝る時間だと身体に知らせる
  • 「眠らない努力」をする! (「眠らない」と心に決めるほうが眠れる!)
  • 眠りを誘う音楽を流す: 寝床に入る度に眠けを誘う曲を流す(睡眠とその曲を関連づける)→その曲を聞くだけで眠りに落ちるようになる
夜中に目が覚めた時の対処法
  • 起き上がる
    • ゆるい運動をする(簡単なエクササイズも吉)
    • ジグソーパズルや絵を描く
    • 明るい照明やPC画面は避ける
  • 「眠れない」と不安にならない方法
    • 私逹は思っている以上に眠っていることを理解する
    • 眠らなくても、横になるだけで身体は休まる
    • 夜に眠れないのは産業革命以前からの睡眠パターン: 眠れなくて当たり前 産業革命以前の北半球での睡眠パターン: 4時間寝て、1時間ほど起きて4時間寝る