目次
はじめに
新東名では「長篠設楽原パーキングエリア」は長篠の戦いがあった地に近いという。
黒澤明の『影武者』は父親と一緒に見た記憶がある。いわゆる「三段撃ち」がハイライトの一つではあった。 実は映画での三段撃ちは後世の創作らしく、実際はそのような攻撃はなかった説が有力らしい。
そんな内容がこの動画で解説されている:
信長と言えば「いかにも」なエピソードが多く、戦国時代の英雄扱いされていると思う。 しかし実際にそういうイメージ通りなのかは、あまり考えない。
上の動画のチャンネル であるりん では、通説とは異なる信長の本当の姿を解説してくれているので、興味ある人は見てみると良い。
上の動画に刺激を受けて、近年の信長研究の実際を知りたいと思って見付けたのがこの本だ。
この本の目次
この本は近年の研究成果が章ごとにコンパクトにまとめられている。章の長さもほどほどで、少しずつ読むにも丁度良い。
全体的な感想としては、信長は何か天才的な閃きに溢れた人物というよりは、それまでの歴史や幕府・朝廷との関係性に配慮しつつ、また周囲の国の流動的な動向に現実的な対応をしていたようで、自分には信長が非常に身近に感じられる内容だった。
目次を拾うと
- 政治権力者としての実像とは
- 信長は、将軍足利義昭を操っていたのか
- 信長は、天皇や朝廷をないがしろにしていたのか
- 信長は、官位を必要としていたのか
- 織田・徳川同盟は強固だったのか
- 信長は、秀吉をどのように重用したのか
- 信長は軍事的カリスマか
- 桶狭間と長篠の戦いの勝因は
- 信長は、なぜ武田氏と戦ったのか
- 信長を見限った者たちは、なにを考えていたのか
- 明智光秀は、なぜ本能寺の変を起こしたのか
- 信長は、なぜ四国政策を変更したのか
- 信長家臣団における「勝ち組」「負け組」とは
- 信長の経済・文化政策は特筆されるか
- 信長の流通・都市政策は独自のものか
- 信長は、宗教をどう捉えていたのか
- 信長は、文化的貢献をしたのか
感想など
足利将軍や朝廷との関係は、非常に常識的な関係、互いに利用しあう関係から不幸にして拗れてしまったようだ。 このようなことは、なかなか学校では教えてくれない。
徳川との関係は、最初から主従ではなく、対等な関係から徐々に主従のような関係になるという当時の力関係の推移が背景としてあるは、その通りなのだろうと思う。
明智光秀の謀反に至った原因についての章は、前後の家臣団の「負け組」、信長から離れていった家臣の例など家臣としての立場の危うさと、四国地方の状況との関係性など自分にとっては新鮮で説得力を感じた。
文化的な面での信長の嗜好のところは、茶の湯と茶器、相撲など信長の好みが分かる。
おわりに
歴史は学校で習った内容がずっと変わらないと考えがちだ。
学校で習う以外でも、歴史小説、歴史ドラマや映画のイメージで捉えてしまう場合も多い。 小説、ドラマ、映画も作者や製作者が持っているイメージや「常識」をベースにしているだろう。
最近研究が進んでこれまでの「イメージ」「常識」が覆る事実が明らかになる場合もある。
歴史研究は地味ながら、歴史を正しく理解する取り組みは基本的な学問としてもっと重視されれば良いと感じる。 予算もしっかりつくような雰囲気ができると良いとも思った。