千葉雅也 / 勉強の哲学

これは面白かった本です。

「深く勉強する」とはどういうことか。深い勉強の実践方法。大雑把に言うと、この二点について書いてある。

深く勉強すると「周囲とのノリが悪くなる」という視点は新鮮で、「ああそういうことか」と思いあたることはありますね。

興味がある領域で「周囲から浮いてしまう」ことは、雑談中もぼくはよくあります。これは、オタク的なノリということなんですね。 今でこそ処世術も身に付けているつもりですが、たまにヤラかしてしまいます。

特定の領域でも深く知ってしまうと、どうしても見方が一般的な感覚からズレてくるのはあたりまえで、この本はそういう部分を勉強の結果だとしています。

勉強の方向性については「ユーモア」、「アイロニー」、「ナンセンス」に分類していて、この視点も興味深い。 この分類は少し難しさを感じましたが、意識しながら勉強・思考するとさらに深いところに到達できそう(かも)。

新しい領域の勉強を始めるときの本・専門書の読み方はとても役に立つと思います。

ざっと抜き書きすると

  • 「まとも」な本を読むことが勉強の基本
  • 入門書は複数、比較すべき
  • 読書は完璧にはできない
  • 「自分の感覚を拡張する」
  • 勉強するにあたって信頼すべき他者は、勉強を続けている他者である

最後に引用した部分は至言でしょう。自分を日々アップデートできない人は信用できません。 また、勉強している人を揶揄したり小馬鹿にする人はさっさと離れるべきですね。

これで思い出すのがぼくの大学時代の教授です。

研究室でランダウ・リフシッツを勉強していたら、どうも気に入らなかったようで「君は工学部だろう?」などと言ってきたものです。 もう30年も前のことですが、これは鮮明に覚えています。

工学部だろうが、物理の基礎をつけておくのは研究で役に立つことです。 そういう勉強より研究室の仕事を優先しろという意味だとぼくは理解しました。 研究室の仕事をサボっていたつもりはなかったですが…。

この教授にとっては勉強なんてそんな位置付けでしかなかったのです。 このようなことを学生に言える大学教授は信用してはいけないなと思ったものです。