メタボ健診の特定保健指導の効果検証例

特定保健指導をしたらHbA1cが増加してしまったことが判明した研究

「よしりん」こと吉野敏明氏が指摘している、特定保健指導をしたらHbA1cが増加してしまったことが判明した研究はたぶんこちら:特定保健指導の効果メタボリック・シンドローム指標の 4 年間の評価

抄録を引用する:

抄録

目的 2008年に始まった特定健診・保健指導の長期的効果を,国民健康保険加入者で保健指導対象者となった例において,保健指導の受講者が未受講者に対し,その後のメタボリック・シンドローム指標に差があったか,4 年間にわたり評価することを目的とした。

方法  対象は2008年から2011年の間に,特定保健指導の対象となった3,742人のうち,指導対象となって以後のいずれかの年に少なくとも 1 回健診を受け,その後の状態が把握できた2,993例である。メタボリック・シンドローム指標のうち,body mass index(BMI),腹囲,収縮期血圧,拡張期血圧,HDL コレステロール,ヘモグロビン(Hb)A1c を評価した。保健指導の対象となった年,基準該当していた項目が評価年に無投薬で非該当となった場合を「改善」,非該当であった項目が評価年に該当となった場合と投薬を受けていた場合を「悪化」とした。各指標の改善と悪化の有無について,保健指導受講の有無との関係を受診時の年齢,性別,BMI 値,収縮期血圧値,HDL コレステロール値,HbA1c 値を調整因子として,多変量ロジスティック回帰分析で検討した。

結果 1 年後の評価が可能であった例は2,690例,2 年後1,894例,3 年後1,330例,4 年後779例であった。多変量解析の結果,特定保健指導の受講者で未受講者に対して有意な改善が認められたのは,1 年後 BMI(odds ratio(OR)=1.66, 95%信頼区間(CI)=1.17-2.37),1 年後腹囲(OR=1.77, 95%CI=1.35-2.31),1 年後 HbA1c(OR=1.82, 95%CI=1.05-3.13),2 年後 BMI(OR=1.51, 95%CI=1.01-2.26),2 年後腹囲(OR=1.61, 95%CI=1.18-2.20),3 年後腹囲(OR=1.67, 95%CI=1.12-2.48)のみで,4 年後の HbA1c(OR=2.49, 95%CI=1.18-5.24)は受講者で有意な悪化が認められた。

結論  国民健康保険加入者を対象とした特定保健指導の受講によって,1 年後の HbA1c および 1 年後,2 年後,3 年後の肥満に関わる指標の改善を認めたが,4 年後評価ではメタボリック・シンドローム指標の有意な改善は認められなかった。

メタボ健診が開始されたのが2008年4月で、この研究が発表されたのが2015年。

メタボ健診が開始されてから比較的早い時期に実施され、その効果を疑問視する結果が出されていたことになる。

メタボ健診の予算規模と制度の妥当性

メタボ健診の予算規模は年間500億円以上である(厚労省保険局資料)。

この制度が目的を達成しているかという問いは自然なものだろう。 東京大学で政策評価をしている例がある: 資料 | 東京大学政策評価研究教育センター

この論文プレビューでも、特定保健指導の効果については疑問視されていることが窺える:

さらに、本研究では保健指導の対象となることによる効果を4年後まで追跡して検討している。この分析では、1年後にわずかに見られた肥満に関する数値の改善効果も、3年後以降は統計的にゼロと区別できるほどの効果が見られなくなることが明らかとなった。また、心血管リスクに関する数値については、1~4年後まで一貫して、統計的にゼロと区別できるほどの効果は見いだせなかった。つまり、回帰不連続デザインが対象とした、腹囲の基準値である85㎝周辺の人々に対しては、保健指導の対象となることによる効果はほとんどないか、あったとしても非常に小さく、しかも短期的にしか見られないという結果が示されたのである。

加えて、本研究では「保健指導の対象となったことによる効果」だけでなく、「実際に保健指導を受けたことによる効果」も分析されている。メタボ健診・特定保健指導という施策では、人々の行動に介入できるのは、保健指導を受けるように推奨するところまでであり、保健指導が強制され、違反したら罰則があるような制度ではない。そのため、メタボ健診・特定保健指導の政策効果を検証するうえでは、前者の分析結果が重要となる。一方、後者の場合は実際に保健指導を受けたことによる効果として解釈することができる。

データでは、実際に保健指導を受けたのは、対象となった人々のなかの約16%であった。この効果を確認すると、肥満に関する数値については、保健指導の対象となった場合の効果よりもやや大きな改善が認められたものの、心血管リスクに関する数値については、先ほどと同じく効果が確認されなかった。つまり、実際に指導を受けた人々に絞って確認しても、特定保健指導の効果はほとんどないか、非常に限定的効果しかないという結果は変わらなかった。「背景」でも述べたとおり、メタボ健診・特定保健指導の導入の目的は生活習慣病の予防とそれによる医療費の適正化であったが、本研究の因果推論に基づく分析結果に照らしてみると、現段階の制度ではその目的を達成しているとは言えないのではないかという示唆が得られたのである。

特定保健指導の中身とは

これはChatGPTにまとめてもらった:

特定保健指導の内容は、対象者の健康リスクに応じて「動機づけ支援」と「積極的支援」の2つの区分に分かれ、それぞれで具体的な指導が行われます。 主に以下のような生活習慣の改善支援が中心です。

特定保健指導の概要

● 対象者

40歳~74歳の健康保険加入者で、特定健診の結果に基づいてメタボリックシンドロームのリスクがある人が対象になります。

リスクの評価基準は以下のような指標に基づきます:

  • 腹囲:男性85cm以上、女性90cm以上
  • +以下のいずれか2つ以上
    • 血圧(収縮期130mmHg以上、または拡張期85mmHg以上)
    • 血糖(空腹時血糖100mg/dL以上)
    • 脂質(中性脂肪150mg/dL以上、またはHDLコレステロール40mg/dL未満)

指導の種類と内容

1. 動機づけ支援(リスクが比較的低い人)

  • 1回の面談(20~30分程度)
  • 健康状態や生活習慣に関するヒアリング
  • 課題の共有と行動目標の設定(例:「夕食の炭水化物を減らす」「毎日15分歩く」など)
  • 自己管理の方法を指導(体重記録、歩数計の使用など)
  • 6か月後に実施状況を確認(郵送や電話フォロー)

2. 積極的支援(リスクが高い人)

  • 初回の面談に加えて、継続的な支援(3か月以上にわたる)
  • 面談や電話、メール、アプリなどを活用しながら定期的にフォロー
  • 内容は以下を含む:
【具体的な指導内容】
  • 食事指導
    • 間食や夜食の習慣の見直し
    • 食塩・脂質・糖分の摂取制限
    • 食事記録の指導(レコーディングダイエット的な手法)
  • 運動指導
    • ウォーキングやストレッチの習慣化
    • 無理のない継続的な運動計画の提案
  • 飲酒・喫煙への対応
    • 節酒指導、禁煙外来の紹介など
  • 睡眠・ストレス管理
    • 生活リズムの改善、ストレス軽減方法の提案

指導実施者

医師、保健師、管理栄養士、看護師などの専門職が対応します。最近ではICT(アプリ、オンライン指導)を活用するケースも増えています。

実施スタイルの例

  • 対面型(健診会場・医療機関)
  • 電話指導
  • Web面談、オンラインプログラム
  • スマホアプリ連動型

もし、どんな教材や資料が使われているか、あるいはどのような指導プログラムが効果的とされているかなど、より詳細を知りたい場合も教えてくださいね。

特定保健指導の「積極的支援」における食事指導は、対象者のライフスタイルや食習慣を丁寧にヒアリングした上で、無理なく継続できるように調整された「行動変容型」のアプローチが取られています。

以下に、具体的な指導内容を分かりやすくまとめました:

特定保健指導(積極的支援)の食事指導:詳しい内容

1. 現状の把握と食習慣の分析

  • 食事記録(1日〜1週間分)をつけてもらい、それを基に栄養士や保健師が評価。
  • 「何を」「どれだけ」「どんなタイミングで」食べているかを把握。
  • 例えば:
    • 主食・主菜・副菜のバランスは?
    • 朝食を抜いていないか?
    • 夜遅く食べていないか?
    • 間食・飲酒の頻度は?

2. 食事指導の主なポイント

エネルギー制限(摂取カロリーの適正化)
  • 目標体重(理想BMI)に基づき、1日の適正カロリー量を提示。
  • 例:男性で1日1800〜2200kcal、女性で1600〜2000kcal など。
  • 摂取カロリーを減らす方法:
    • 揚げ物 → 焼き・蒸し料理へ
    • マヨネーズ・ドレッシングの量を半分に
    • ご飯は「小盛り」or「おにぎり1個分」
糖質・脂質のコントロール
  • ご飯・パン・麺の「食べ過ぎ注意」(特に夜)
  • ジュース・缶コーヒー・スポーツドリンクなどの“見えない糖分”にも注意。
  • 脂質は、動物性脂肪(ラード・バター・霜降り肉)より植物油・魚油へ置き換え。
野菜を「先に」・「たっぷり」
  • 1日350g(両手3杯分)が目安。
  • 食物繊維が血糖上昇を抑える。
  • 「ベジファースト」:まず野菜から食べることで満腹感も得やすい。
塩分制限(高血圧予防)
  • 日本人は塩分摂取量が多いため、「1日6g未満」が推奨されることが多い。
  • 具体的には:
    • 味噌汁の汁を残す
    • 漬物・梅干しの頻度を減らす
    • 「かけ醤油」ではなく「つけ醤油」

3. 行動目標の設定(SMARTの原則)

指導では、ただ「減らしましょう」と言うのではなく、本人が納得し「実行できそうなレベル」で具体的な目標を設定します。

例:

  • 「カロリーを減らす」 →
    「ご飯を1日1杯分減らして、その分サラダを足す」
  • 「野菜をもっと食べる」 →
    「昼食にコンビニで野菜スティックを1品追加する」
  • 「甘い物をやめる」 →
    「間食を週3回までに減らす」

4. 教材・ツールの活用

  • 食品交換表(糖尿病用など)
  • 写真付きの「1日○kcalメニュー表」
  • 食品成分表やアプリ(カロミル、あすけん等)による自己管理

5. モチベーション支援

  • できたことを褒める・振り返る
  • 習慣化をサポート(リマインダーやアプリ連携)
  • 家族の協力も重要な要素として取り上げる

必要であれば、実際に使われる「目標設定シート」や「食事指導マニュアル」のような具体例もご紹介できますよ(公的資料や研修用教材など)。

気になるところや、「自分ならどういう指導をされるのか?」みたいな想定もできるので、興味あれば気軽にどうぞ!

よしりんの説明

動画のなかでは「がんばっているのに結果がでない」原因として

  • やる気がない
  • バカだから
  • 騙されている

をよしりんは挙げている。少し分かりづらいので私の言葉にするなら

  • 実際にはがんばっていない
  • 能力がない
  • 間違ったことをがんばっている

ということだと思う。

よしりんの説明では、最後の「騙されて」「間違ったことをがんばっている」ということ。

上記の特定保健指導の食事指導の内容でもあるように、植物性の油を推奨している。 これを信じてしまうと、コーヒーフレッシュやホイップクリーム、ラクトアイスなどは問題ないように思ってしまうだろう。 ビスケットなどにもクリーム系のものが挟まれていたりする。

よしりんが説明している特定保健指導の食事指導の問題を雑にまとめると下のような感じだろうか:

通常の食べ過ぎが糖尿病になるメカニズム

まずは通常の食べ過ぎが糖尿病になるメカニズム

植物性の油の過剰摂取が糖尿病になるメカニズム

植物性の油はダイレクトに内蔵脂肪に貯蔵されるため、ほかのカロリーを低減しても植物性の油の摂取量を減らさなければ糖尿病になるリスクは低下しないことになる。

なお「過剰摂取」は誇張や特定のジャンクフード愛好家のことではなく、現代の日本人は戦前の50倍の植物性の油を摂取している。 100年程度で人間の身体が植物性の油の摂取に適応するはずもない。 つまり今の時代で、植物性の油を過剰摂取していない日本人はいない。