インフルエンザ脳症の原因

インフルエンザ脳症の原因に関するXのポストから

Xのポストで見付けた:

この話は ワクチン不要論 内海 聡 (著) でも言及されている。 なお、内海氏の書籍は正しい内容もあると思うが、出典が示されないため自分で確認するのが安心だ。

CLINIC FORによる解説

より詳しい解説はインフルエンザの時服用すると危険な解熱剤とは?医師が解説します。 | CLINIC FORにある。

当初、インフルエンザ脳症の原因は明らかになっていませんでした。ですが、1999、2000年のインフルエンザ脳炎・脳症研究班(森島恒雄班長)の報告によると、インフルエンザ脳症を発症した方が使用した解熱剤に、ジクロフェナクナトリウムまたはメフェナム酸という成分を含んだ薬剤が使用されていたという報告があり、この成分がインフルエンザ脳症の発症にかかわっているのではという見解があります。ジクロフェナクナトリウムはボルタレンという名前の薬剤に含まれている成分、メフェナム酸はポンタールという薬剤に含まれている成分であり、いずれもNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)と呼ばれる種類の鎮静薬になります。

このことから、NSAIDsをインフルエンザによる発熱時に使用するとインフルエンザ脳症を発症し、死亡につながる可能性があるという見解が出され、使用しないことが推奨されています。NSAIDsという種類のお薬には、ボルタレンやポンタール以外にもさまざまな薬剤があります。現在のところ、上記薬剤以外の使用頻度が少ないということもあり、他の薬剤の安全性については十分に確認できていません。インフルエンザ脳症とのかかわりが指摘されているお薬があるという観点からすべてのNSAIDsについて、インフルエンザによる発熱の際には使用しないよう推奨されています。

インフルエンザ脳炎・脳症研究班(森島恒雄班長)の報告

上記の「インフルエンザ脳炎・脳症研究班(森島恒雄班長)の報告」は恐らくこれ: [PDF] イ ンフルエ ンザの臨床経過 中に発生す る脳炎・脳 症の疫 学及び病態 に関する研究

4.解熱剤の影響について

昨年度の研究結果からジクロフェナクナトリウム及びメフェナム酸が本症の予後の悪化に関与する可能性を指摘した。この点について、今年度さらに検討を続けたところ、その中でもジクロフェナクナトリウムが明らかに致命率(死亡率)を上昇させる結果を得た。

一方、アセトアミノフェンについては今年度も死亡率を上昇させるという結果は得られなかった。これらの結果は、緊急に公表すべきと判断し、厚生省及び小児科学会に報告し、 対策をお願いした(平成12年11月)。

一方、平成12年11月公表した二次アンケートの中で解熱剤使用不明群について、死亡率が高いと判断されたため、これらの症例について厚生省に詳細な再調査を依頼した。その結果、表に示すごとくメフェナム酸の致命率(死亡率)は 38.5%、その他の解熱剤については同 57.1%と、11 月公表の時点よりも高くなっていることが示された。

これらの点を考えると、小児科学会理事会の見解にあるようにインフルエンザにおける解熱剤の使用については、もし使用するとすればアセトアミノフェンが望ましいと考える。

アセトアミノフェンの問題

2024-12-31追記

上記で「アセトアミノフェンが望ましい」とあるが、アセトアミノフェンそのものが安全というわけでもない。(参考: 【アセトアミノフェン含有の市販薬(一般用医薬品)】 | 社会福祉法人賛育会)

Hinson JA, Roberts DW, James LP. Mechanisms of acetaminophen-induced liver necrosis. Handb Exp Pharmacol. 2010;(196):369-405. doi: 10.1007/978-3-642-00663-0_12. PMID: 20020268; PMCID: PMC2836803.によれば

アセトアミノフェンは治療用量では安全であると考えられているが、高用量では中心葉肝壊死を引き起こし、致命的となる。 アセトアミノフェン中毒は、今日の米国および英国における急性肝不全の症例のおよそ2分の1を占めている。 その機序は複雑な一連の事象によって起こる。 これらの事象には以下が含まれる: (1)グルタチオンを枯渇させ、タンパク質と共有結合する反応性代謝産物へのCYP代謝、(2)壊死性変化を起こした肝細胞における活性酸素と窒素種の形成の増加に伴うグルタチオンの喪失、(3)カルシウムホメオスタシスの変化とシグナル伝達反応の開始に伴う酸化ストレスの増大、(4)ミトコンドリア透過性転移; (3)カルシウム恒常性の変化とシグナル伝達反応の開始に伴う酸化ストレスの増加により、ミトコンドリア透過性転移が起こる。(4)さらなる酸化ストレス、ミトコンドリア膜電位の喪失、ミトコンドリアのATP合成能力の喪失により、ミトコンドリア透過性転移が起こる。 このような本質的な事象に関連して、ある種のサイトカインやケモカインのような、毒性を修飾しうる多くの炎症性メディエーターが存在するようである。 酸化ストレスを変化させるものもあることが示されているが、これらの調節因子と他の重要な機序的事象との関係はまだよく解明されていない。 さらに、既存のデータは、肝構造と肝機能の再確立につながる再生過程の開始におけるサイトカイン、ケモカイン、成長因子の関与を支持している。

アセトアミノフェンの効果そのものも心許ない(Li S, Yue J, Dong BR, Yang M, Lin X, Wu T. Acetaminophen (paracetamol) for the common cold in adults. Cochrane Database of Systematic Reviews 2013, Issue 7. Art. No.: CD008800. DOI: 10.1002/14651858.CD008800.pub2. Accessed 31 December 2024.):

758人が参加した4件のRCTを対象とした。 研究デザイン、アウトカム、時点が異質であったため、データのプールは行わなかった。 4件の研究のうち3件が4~6時間の短い試験であったため、数時間以上の効果に関する情報はまばらであった。 アセトアミノフェンを投与された参加者は、4件の研究のうち2件で鼻閉に有意な改善がみられた。 1件の研究では、アセトアミノフェンはプラセボよりも鼻出血の重症度減少に優れていたが、くしゃみと咳の治療には優れていなかった。 アセトアミノフェンは、4件の研究のうち2件では咽頭痛や倦怠感を改善しなかった。 いくつかの症状については結果に一貫性がなかった。 2件の研究では、頭痛と疼痛はアセトアミノフェン群でプラセボ群よりも改善したが、1件の研究ではアセトアミノフェン群とプラセボ群の間に差は認められなかった。 風邪症状の持続期間を報告した研究はなかった。 アセトアミノフェン群における軽度の副作用(胃腸有害事象、めまい、口渇、傾眠、発汗増加を含む)は、4件の研究のうち2件で報告された。 そのうち1件はプソイドエフェドリンとアセトアミノフェンの併用であった。