梅原猛 / 葬られた王朝―古代出雲の謎を解く

久し振りに梅原猛を読んだ。面白くて、ほとんど一気に読んでしまった。

10年以上前に「神々の流竄」を読んでいたが、その中での主張の半分の訂正になるという。

古代の出雲と大和朝廷の関係の歴史に迫る論考。 これを書いている時点で80歳を越えていたとのこと。年齢を感じさせない探求の姿勢は見習いたい気はする。

梅原猛の論考や推論をどこまで信じるのが良いかは正直分からないが、論考としてはとても興味深い。 古事記・日本書紀の裏側を探りながら、神話とされている古代日本の歴史を丁寧に再構築するようだ。 出雲大社に神々が集う理由、そして巨大であったと目される出雲大社が建立された理由まで考察していて、自分の知的好奇心を大いに満たしてくれた。

神話だと思っていた話が、梅原猛にかかると活き活きとした人間のドラマになっていく。 日本人の感覚、考え方を再認識できるという意味でも興味深い内容だった。 とくに黄泉の国に代表されるような日本人独特の死後の世界の捉え方(「あの世」は「この世」のあべこべになっていると考えるなど)についての考察に際して、土偶の意味に関する梅原猛の考えは説得力を感じた。 たしか地下の世界があべこべになっている話が漫画のドラエモンにもあったような(うろ覚え)。

『神々の流竄』、『隠された十字架-法隆寺論』、『水底の歌―柿本人麿論』と今回の『葬られた王朝―古代出雲の謎を解く』まで、これらすべてにおいて結局のところ裏の主役は藤原不比等というのが梅原猛の説の根幹を成す。久し振りにこれらを読み直したくなった。