(更新日: 2025年9月24日 )
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最新のクルマは電気をよく使う
最近のクルマは「走る・曲がる・止まる」以外の機能が充実していて、エンジンを止めても完全に眠る状態にならない。 つまりエンジンを止めても電気をチョロチョロ使い続けているのが、最新のクルマのあり方だ。
プリウスのバッテリーあがり
この記事の時点での最新型、いわゆる60プリウスのバッテリーあがりの問題に関する動画がいくつかある。
このユーザーの場合、新車納車10ヶ月でバッテリー交換したと言う。
先進技術の塊のようなプリウスにユーザーが自前で電圧モニターを設置している。 さらにエンジン止めてからキーをクルマから遠くに置くなど、非常にデリケートな扱いが必要らしい。
(ちなみに私のクルマは10年式のエンジン車だが、バッテリーあがりの経験は半ドアの不注意の一回だけ。こんなに補機バッテリーの状態を気にしたことはない。)
これが最先端のクルマを持つ生活とは。なにかの間違いか冗談だろうか。
なお、この動画のコメントではハイブリッド車のバッテリーあがりの言及は多数ある。
アクアもバッテリーがあがる
アクアに関する動画もある:
このアクアの場合は納車後9ヶ月でバッテリーあがりを経験したという。 このユーザーも電圧計を設置している。
なぜハイブリッド車の補機バッテリーあがりが発生するのか
ハイブリッド車の補機バッテリーあがりが発生する理由は二つ考えられる:
- 車両の電力消費が多い
- 補機バッテリーの充電が不十分
これらを順に見ていこう:
車両の電力消費が多い
前述の通り、先進技術は電気を使う。 先進技術がてんこ盛りの車は「走る・曲る・止まる」以外の消費電力が多いのだ。
これらの電力を供給している補機バッテリーの負荷は非常に高い。 消費電力に対して補機バッテリーの容量に余裕がない(小さすぎる)ということはありそうだ。
なお鉛バッテリーは深い放電に弱い。また充電不足でもバッテリーの劣化が進行しやすい。
こうしたことから、先進技術が多く搭載されたクルマの鉛バッテリーの寿命が短いことはあるだろう。
補機バッテリーの充電が不十分
動画での説明通り、ハイブリッド車の場合はオルタネータ(エンジン直結の発電機)は搭載されず、補機バッテリーの電気は駆動用バッテリーから供給される。 駆動用バッテリーの充電量が低い状況では、補機バッテリーの充電は実施されない。 だから駆動用バッテリーの状態によっては、補機バッテリーへの充電が不十分になる状況はあり得る。
恐らく「燃費性能」のために、エンジンをなるべく使わず駆動用バッテリーの電気を使って走ろうとするだろう。 そうすると、駆動用バッテリーの充電量(SOC)が高い状態にある時間は短いと推測される。
そもそも補機バッテリーのSOCを車両がモニターしていない。 だから補機バッテリーのSOCが低いからと言って、エンジンを始動して駆動用バッテリーを充電→補機バッテリーを充電するような制御はないと考えるのが自然だ。 そうなると、補機バッテリーを十分に充電できない状況は起こり得るのではないか。
なんでこんなクルマが「先進」なのか
ユーザーが自前で電圧計を設置するなど、DIY感あふれる先進のハイブリッドカー。 バッテリーあがりに気を使っていた1960~70年代に逆戻り。かえってこれが新鮮ということだろうか。
なんでこんな有様なのか。
補機バッテリーを増強すれば、コストも上がるし、車両重量も増えて燃費が悪くなる。 また仮に補機バッテリーのSOCをモニターし、エンジンを始動して駆動用バッテリーを充電→補機バッテリーを充電すると、やはり燃費は悪化する。 ちなみに多くのクルマでは補機バッテリーSOCはモニターしていないから、補機バッテリーのSOCモニターを搭載すればコストも上がる。
すべてはコストと燃費のために、補機バッテリーの車両管理が脆弱になっている構図だ。 バッテリーあがりでエンジンどころか車両システムすら始動できなければ、せっかくの先進技術も台無しだ。
先進技術で消費電力が増えているのだから燃費が悪化するのは当然なのだが、どうやら自動車メーカーやユーザーのマインドが追い付いていないように見える。
おわりに
「環境のためなら不便もやむなし」を地で行っているのが現代のクルマということだろうか。 エコで先進なクルマは、不便を許容できる環境意識高い系の方々に乗ってもらうのが良いだろう。 こんな素晴しい「進んだクルマ」なんて我々には勿体無い。
そもそも地球温暖化すら本当かどうか怪しいという説もあるくらいだし、頻繁にバッテリーを交換するクルマが果たしてエコなのかも考える時期なのではないだろうか。
もし、あなたが2010年前後のエンジン車に乗っているのであればそれを大事に乗るのが良いだろう。 昔のエンジン車でガソリンを燃やし続ける生活には、バッテリーあがりを気にせずドライブを純粋に楽しむ余裕とエンジンの振動を味わうロマンがある。