企業での研究

2017年9月18日

半導体業界を例にとって、企業での研究のあり方について考えてみたいと思います。反省とも言います。

2016年現在、日本の半導体業界は日本メーカーは死に体という状況です。ロジックはルネサスだけですが、厳しい経営状況です。メモリは、日本のメーカーはない状況です。

このような状況になった原因の一端を企業での研究という側面から振り返ってみようという試みです。私はプロセス・デバイスの研究開発の経験はありますが、回路の経験はありませんので、不正確なところがあるかも知れません。

半導体業界での開発は、プロセス(工程)開発とデバイス開発、そして回路の開発に分けられます。ここではデバイス開発に着目します。

ここ数十年の電子デバイス開発の先端は、「超伝導」「量子効果」「ナノテク」「単電子」といったキーワードでした。これらのキーワードのうち、ものになったものは無かったと言っても過言ではないでしょう。ちなみに、私の感覚では、「ナノテク」は基本的に「ナノ材料」を指すことが多いです。

日本の企業の研究でも、これらのキーワードを冠した「研究」が行われてきました。これらのキーワードがあると予算が取りやすい、上層部からのOKも取りやすいなどの理由があったと思います。「我社はこんな先端技術を保有しています」と取引先等への宣伝になるために、営業担当からも要望があったりします。

問題なのは、最終製品でどうなるのかを意識した研究が少なかった点ではないか、と思います。半導体の微細な構造に敏感な「量子効果」を原理とするデバイスが大量生産に向くのか、ばらつきはどうか、信頼性はどうか、などの視点です。別の例で言えば、スイッチング素子に使うのであれば、カーボナノチューブのようにバンドギャップが狭い材料を用いることでスイッチングon/off比をどの程度確保できそうなのか、等の「そもそも論」が真剣に議論されにくい雰囲気があったと思います。

「研究者」が刹那的に「研究費」を得て研究したとも言えます。このせいで、却って自分たちの首を締めているように思えます。これは、上記キーワード領域のポジティブな側面だけを見せてネガティブな側面を誤魔化してきた報を受けているわけです。

特に先端領域は、ポジティブな側面よりも解決すべきネガティブな側面の方が多いのが普通です。企業研究では、ネガティブな側面を解決する(できる)見込みを見極めて、最終製品での姿を描くことが重要と思います。