「技術経営の常識のウソ」伊丹敬之・東京理科大MOT研究会編著 – 総論

2017年9月23日

技術経営の常識のウソ を買いました。読書メモをつけながら読んでいきます。まだ総論だけしか読んでいません(汗)。

会社で技術系の仕事をしていれば、知らず知らずにMOT的な考えに触れる機会は多いものです。そんななかでは、チャラチャラした言葉が飛び交って、ふわふわと実体のないような議論で物事が決まっていく過程を眺めた経験は、誰しも持っているのではないでしょうか。そういうチャラい議論のウソに興味があって読み始めました。Amazonのレビューなどでは「だからどうするがない」的な感想もあったように思います(不正確かも知れません)が、どういうウソがあるか俯瞰するだけでも大事だと思います。

ちなみに 研究開発マネジメントノート というブログがありまして、研究開発のマネジメント(MOT的なネタも含めて)に関する話題が参考になります。そこで、大分前に紹介されていた本です。

私は中古で購入しました。総論のところだけマーカーがたくさん引いてあります。前の持ち主はそこで力尽きたのでしょうか(笑)…。

常識のウソの一般論

『ある経営行動に伴って第一次的に表面に出てくる現象にとらわれすぎてしまうから』

『オープンイノベーションを試みれば、他社の技術開発成果を自分も使えるようになる』という表面的な第一次現象がたしかに起こる→表面に現れる現象は、多くの人に見える。その表面現象は信じられる。→その現象をもたらした経営行動そのものの「全体的意義」を信じてしまう。多くの人が「あの経営行動は良い」という常識を共有してしまう。

表面から常識が生まれ、それがウソとなるパターンは4つ:

  1. 表面現象の底に潜むマイナス面に人々の目が十分行かないままに常識が形成されるタイプ

    オープン・イノベーション、プロジェクト型組織マネジメント、ステージゲートプロセス

  2. 表面現象が、底に隠れた良さを隠してしまう(奥深くに潜むものがプラスの場合)タイプ
  3. 表面のマイナスが、そのマイナスを軽減・中和する手段の可能性を考えさせなくさせ全体を否定させてしまうタイプ
  4. 国の違いによって目くらましにあって、常識が生まれてしまうタイプ

常識のウソを生む真因

  1. 日本企業にある途上国メンタリティ

    『最後の判断になったときに、どこか気弱なのである』『ついつい「学ぶべき先進国」としてきにするのである』

    『そのメンタリティゆえに、判断の歪みがもたらされることがまずい』『「アメリカではの守」がその例である』

    『そうした途上国メンタリティがあると、単に盲従するだけでなく、日本の強みの正当な評価もできなくなる危険が大きい』

    私が経験した会社でも、このメンタリティはあるように思います。大抵はオープンイノベーションが大好きですね(笑)。大好きな人たちは、研究内容も自分で考えない人ばかりと思います。

  2. 手際が良く見える解決策を探したがるクセ

    「手際のいい」の意味は二つ:

    1. 論理的に説明可能でかつシステム性、全体性があること: 事前の手際の良さ
    2. 現場での泥沼の苦しみなしにスマートに導入できること: 事後の手際の良さ

    『現場では過去のしがらみで根の深い問題が底に横たわっていることが多い。(中略)一応は改善しそうな解決策を考えたくなる…。』 『(中略)現場での事の本質に迫った解決策をとらざるを得ないような状況を作れたときにのみ、根の深い問題は前へと進み出す。(中略)事前にきれいな論理が作れるような解決策ではなく、未知の部分を含みながらも本質に迫るような泥臭い解決策が実際には機能するのである』

    『一般に技術者が事前に理屈を求めたがる傾向が強い。』『技術経営の分野ではとくに手際のいい解決策が求められる傾向が強いように思われる。』

    上記は非常に共感できるところです。組織の問題でも、「頭の良さそう」な解決を考えがちですが、実際には壁に当たった時の対処で頓挫しがちと感じています。逆説的ですが、うまいやり方を探すことで問題に対して正面から取り組まずに、教科書的な類題に無里やり当てはめることをして、を自分で考えることを放棄するわけです。

  3. 組織の中の人間の力学の軽視

    『技術経営の現場の人たちの中に、組織の人間模様の中で起こりがちなこと、人間集団の中の人間の力学がもたらす歪みについて、理解が足らない人が案外多い』『人間力学が無視される中で常識が成立し、、しかし現場では人間力学が満ちているので、結果として常識がウソとなる』

    『人間の力学を深く考えようとすると、しばしば技術者として受けてきたトレーニングが邪魔をする』

    • 『そんな不確実な話がいやだから技術者になった人が多い』
    • 人間の力学を現場で考えるための訓練の場が少ないのが、多くの技術者の共通の特徴

    この辺りは読んでいて耳が痛い…。人間を相手にするのが苦手な人が人をマネジメントしなければならないのが、技術系の組織の大きな矛盾と言えるでしょう。

    そもそもコミュニケーションが出来ない人は多いと思います。文章もひどい人も多いですが…。

常識のウソへの対応

  • なんとか思考の世界で抵抗してウソにハマらないようにする
  • ウソのすぐそばの光の源があることを理解して、その光を追い求めること
    • 底に潜むものの活用

      底に潜む現象を直接活用する

    • 多くの人が目くらましにあうことを逆手にとる

      目くらましの背後にあるものを見据えて、それへのきちんとした対応を考えた経営行動をとると(中略)ユニークな成功例を作り出せる可能性がある。

この後に具体例があるのでしょうから、ここはさらりと流して読みました。

常識のウソへの抵抗

常識のウソへの抵抗の基礎力

  • 現場主義への回帰
  • 人間力学への「ジャンプ」

この辺りは、その通りなんでしょうね。あまり感想はありません。「現場」の意味は、その時々で適切に意識する必要はあります。それが一番難しいタスクのように思いますね。