企業による学会活動の見方

企業内での研究活動は、外からはあまり見えない場合が多々あります。その一端を垣間見ることが出来るのが、学会活動と知財活動です。一言で言って、それらはその会社スタンス次第です。ここでは、まず学会活動に関して、私の経験からいくつかのポイントを以下に述べます。

学会活動の意義

個人的には主に3つの意義があると考えています:

  1. 技術力のアピール
  2. リクルートの場
  3. 研究者のモチベーションアップ

技術力のアピール

正攻法で技術力をアピールする位置づけの発表です。権威のある国際会議などにおける発表がこれに相当します。

例えば、半導体では大きな国際会議があります。ISSCC、IEDM、VLSIシンポジウムなどの名前を良く聞きました。これらの会議で発表することは、各会社の技術力をアピールすることを意味します。これらは、査読があります。企業にとっては、製品以外でアピールする重要な場ですので、これら会議に合わた戦略的な発表を計画することがあります。

一方、査読なしの学会発表の場合は注意が必要です。発表に査読がないということは、投稿すれば発表できる訳です。したがって、発表内容の質が保証されていないと考えるのが自然です。

こうした、査読が無い(比較的イージーな)発表よくあるケースとして、企業としてはボツのネタである可能性があります。企業が発表する場合は、「その内容を発表しても良いか」を社内でまず判断されます。「発表しても良い」内容は、公表しても問題がない内容という意味です。競争相手に知られたくない内容は発表しないのが、よくある考え方です。逆に言えば、多く発表する会社は、ボツとなるネタを発表している可能性があります。特に査読のない学会発表をする場合は、その可能性が高いと言えます。

本業と関係ないネタの場合もあります。こういうネタは、研究者自身の興味本意で実施している場合が多々あります。つまり、会社の戦略と連動していない研究テーマの発表と言えます。

何度も似たような内容を、少しずつ変えて発表している場合もあります。会社の技術力の有無は、有力な学会・論文誌に継続的に発表できているかをチェックすることが必要です。数年に渡って観察していると、その企業の研究スタンスを理解することが可能です。

分野が未成熟な場合は、このような査読なしの学会発表するケースが多いと言えます。査読がないということで、気軽に発表できるため先端の興味深い発表がある反面、発表される内容のレベルも玉石混交になるのが避けられません。概して、発表者のスキルも低い場合が多いと感じます。

リクルートの場

学生に会社を知ってもらう手段として、学会は好都合です。会社の技術領域の学生との接点を形成しやすく、また費用もリーゾナブルです。会社側としても、発表を通じて学生を知ることが出来ます。

研究者のモチベーションアップ

研究者のモチベーション向上も必要な側面と言えます。ただし、学会活動がないとモチベーションが向上しない場合はマネジメントに問題がある可能性があります。テーマ設定や、社内の評価基準などを再確認するのが良さそうです。

まとめ

企業活動と学会活動は対立するものではありませんが、学術的な意義よりも企業活動に沿ったものになるのが普通です。ただし、なかには意図が分かりかねる発表もあります。学会発表を多くする会社に技術力があるとは限りません。上記のような点に注意して発表を眺めると、その会社の別の側面が浮かび上がるかも知れません。

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