専門と仕事

2017年9月18日

はじめに

ここで言う専門とは、大学や大学院で専攻したという意味で用いています。 過去に会社で「自分は大学で〇〇をやっていたので〇〇屋です。他は出来ません」という人がいました。 そこまで明確に言い切ることはしなくとも、悩む人はいると思いますので、私なりの考えを述べてみたいと思います。 当たり前のことかと思うかもしれませんが、意外と理解されていないことと感じていますので、駄文を晒します。

「専攻」を選ぶ時はどうだったのか

専攻や研究室配属の時の研究室を選ぶ時の基準はどうだったのかを考えてみましょう。 自分の学科の中から専攻を選んだり、研究室を選んだりすることが多いでしょう。 (自分の学科以外を選ぶのは、あまり一般的ではないでしょう。) それは、自分のほぼ知っている範囲からの選択です。 ですから、ある程度の覚悟を持って選択し、その結果を受け入れることになるでしょう。

ここで大事なのは、その時に有りとあらゆる選択肢を全て検討した訳ではない、という事です。 その時の所属学科という条件の下で、その時の自分の興味で選んだに過ぎません。 そもそも数学や化学が好きだったから選んだというのであれば、大学などでその専門の研究を続けるのが幸せと思います。

大学や学校での「専門性」と企業での仕事との関係

大学の研究室で研究していることは、企業ではやっていないことが往々にしてあります。 そもそも研究なので、よく分かっていないことを調べることが仕事です。 ましてや、実用化に近いことは、様々な理由から、大学で出来ないことが多いのが実情です。

一方、企業は収益を上げて給料を払う役割があります。収益と直結しないと思われることに対しては消極的になるのは仕方ありません。 ですから、企業での仕事は、収益に対してある程度の見通しがつかないことをやることは稀です。 したがって、大学でやっていたことに関連することを企業でやれることは稀であると考えるのが、おおよそ自然です。

20歳そこそこでの数年の経験が「専門」なのか

もう一度「専門」という言葉に立ち返ってみましょう。 大学で学んだ期間は人生のなかでも20歳前半での数年です。 しかも、普通は指導教官の下で、先輩や助教などの指導を受けながら単位を貰うのですから、「〇〇屋」と名乗るほどの実績がある人は多くはありません。 ですから、修士過程や博士課程を出ただけで「〇〇の専門家」等を名乗れる人はよほど実績がある人と思った方が良いです。 〇〇には「数学」「物理」等の分野名だけでなく、「実験」「理論」「化学合成」「結晶成長」など特定の領域名称も含みます。

大学でやったことは意味がないか

大学で学ぶことは、テーマを決めて、ゼミで議論し、計画を立てて、理論計算したり、理論を作ったり、文献等を調べたり、データをとってまとめたり、先生に相談したり、プレゼンしたり、文章にして論文にしたりすることです。 企業でも、先生の代わりに上司や先輩と議論・相談をして、あるテーマ(案件)に対して同様のことをやります。 テーマや目的が異なるだけでプロセスはよく似ています。ですから、大学の研究室で経験したことは無駄にはなりません。

何を自分の専門とするべきか

少なくとも、その分野で自分で仕事を作り、お金を貰える経験を何年か持つならば専門と名乗ってよいのではないか、と思います。 ただ、「私の専門は〇〇です」と言うのは簡単で分かりやすいのですが、経験が少ないうちは慎重になった方がよいと思います。 知らず知らずに自身の視野を狭めてしまう危険もあります。 また、周囲から「〇〇しかできない人」というレッテルを貼られる危険もあります。

専門性の高さも大事ですが、守りに入りやすいのが人間です。 自分の間口を広げられる人、言い換えると、広い意味で柔軟に自己開発できる人が、実社会では必要とされますし、生きやすいと思います。